■  痴呆症・アルツハイマー症の危険因子としての血漿ホモシステイン
                        Seshadri, Sudhaら, N Engl J Med.346,2002, 476-483
 

試験の背景
断面研究において、血漿ホモシステイン濃度の上昇は認識力低下や痴呆と関連が認められている。 診断の研究は、ホモシステイン濃度の上昇が痴呆の発症前にみられるのか、また痴呆に関連のある栄養素やビタミン欠乏が原因で発症するのかを確立するために行われた。
方 法
痴呆症のない1092名の対象者(女性667名、男性425名、平均年齢76歳)をFramingham Studyより抽出し、血漿総ホモシステイン濃度と痴呆症発症リスクとの関連を調査した。 年齢、性、アポリポプロテインE(APOE)遺伝子型、ホモシステイン以外の血管系疾病の危険因子、血漿葉酸・ビタミンB12・ビタミンB6などを補正するため、多変量比例ハザード回帰分析を行った。
 
結 果
追跡期間中、痴呆症は111名で発症(10.2%、女性74名・男性37名)し、このうち83名(女性62名・男性21名)がアルツハイマー症と診断された。 5名においてアルツハイマー症の臨床診断が確認された。

血漿ホモシステイン濃度が痴呆症・アルツハイマー症の発展へ及ぼす影響について図表に示した。
高ホモシステイン血症は痴呆とアルツハイマー症の発症リスク増加をさせることが示唆された。

表1.年齢別血漿ホモシステイン濃度
年齢 人数 血漿ホモシステイン濃度(μmol/l)
平均値±SD 範囲
65-69 46 11.5±3.9 5.4-25.5
70-74 457 12.1±5.9 4.1-66.7
75-79 315 12.6±5.9 3.5-66.9
80-84 179 14.2±7.3 4.5-56.1
85-89 66 15.3±8.0 5.5-59.6
90-94 29 22.3±12.6 5.4-61.6

図1. 血漿ホモシステイン濃度と痴呆症発症率との関係

結 論
本研究より血漿ホモシステイン濃度の増加は、痴呆症やアルツハイマー症の進展において関連の強い、独立した危険因子であることが示唆された。
ホモシステインはB群ビタミン(葉酸・B6・B12)により減少されることが確認されているため、これらのB群ビタミン摂取により、痴呆症・アルツハイマー症が予防される可能性があるといえる。

 

 

 
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