マルチビタミン摂取が大腸ガンに及ぼす影響
Eric J. Jacobsら, Am J Epidemiol 2003; 158: 621-628

   

 数種類の成分が複合されているマルチビタミン剤の摂取は、大腸ガンの発症リスクを減少されることが推察されている。筆者らはマルチビタミン定期摂取者(週に4または5回)と大腸ガン発症との関連性を、145,260名の成人男女を対象に調査した。
 本調査の対象者は1982年に開始されたCPS-Uコホート研究の対象者であり、1992年または93年に本調査Nutrition Cohortに登録され、1997年まで追跡調査された。対象者のサプリメント摂取状況については、1982年と1992、93年のそれぞれの登録時にアンケート調査が行われている。
 1992年から97年の追跡期間中に、797名において大腸ガンが発症した。1992、1993年登録時にマルチビタミンを定期的に摂取していた人においては大腸ガンリスクに対する影響は見られなかったが、10年前つまり1982年当時にマルチビタミンを定期的に摂取していた人においてリスク低減がみられた(率比(Rate Ratio):0.71)。1982年当時から92, 93年の時点においても摂取を継続している人、さらに摂取を中止した人においても同様にリスクが低下した。 これらの結果は、マルチビタミン剤を摂取してすぐにではなく、以前から摂取している人において、大腸ガンの発症リスクが低下することを示唆している。
   

表1 過去または最近のマルチビタミン剤摂取が大腸ガン発症に及ぼす影響

 
結腸
直腸
大腸
1982年
非摂取
1.00
1.00
1.00
時々摂取
0.83 (0.62-1.11)
0.93 (0.61-1.43)
0.86 (0.68-1.09)
定期摂取
0.72 (0.55-0.94)
0.69 (0.46-1.04)
0.71 (0.57-0.89)
1992, 1993年
非摂取
1.00
1.00
1.00
時々摂取
0.82 (0.47-1.43)
0.47 (0.15-1.50)
0.73 (0.44-1.19)
定期摂取
0.92 (0.74-1.14)
1.36 (1.00-1.85)
1.04 (0.87-1.23)
率比(95%信頼区間)
定期摂取 : 週4回以上

補正因子 :

年齢・性・学歴・BMI・運動・飽和脂肪酸摂取・ビタミンCおよびカルシウムサプリメント摂取

表2 マルチビタミン剤摂取時期が大腸ガン発症に及ぼす影響

非摂取
結腸
直腸
大腸
時々摂取
1.00
1.00
1.00
定期摂取
0.85 (0.62-1.18)
0.96 (0.58-1.60)
0.88 (0.67-1.15)
過去のみ摂取
0.75 (0.52-1.08)
0.71 (0.38-1.34)
0.74 (0.54-1.02)
現在のみ摂取
0.90 (0.71-1.14)
1.39 (1.00-1.95)
1.03 (0.85-1.25)
過去・現在ともに摂取
0.65 (0.47-0.89)
0.95 (0.60-1.51)
0.73 (0.56-0.94)
率比(95%信頼区間)

補正因子 :

年齢・性・学歴・BMI・運動・飽和脂肪酸摂取・ビタミンCおよびカルシウムサプリメント摂取

 


 

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