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■ 微量栄養素と卵巣がん:患者対照研究(イタリア)
Bidoli Eら, Annals of Oncology 2001;12:1589-1593
これまでの調査では、微量栄養素と卵巣がんとの間に様々な関係があるといわれてきた。 ある研究ではビタミンAとその前駆体が卵巣がん発症リスクと逆相関関係にあるという結果がみられている。
一方他の研究では、β-カロテンと卵巣がんの間には関連がみられなかったと報告している。 またルテイン/ゼアキサンチンと有意な逆相関関係を報告している研究もあるが、ビタミンCやビタミンD、ビタミンE、チアミン、リボフラビン、葉酸、カルシウムとの関連は観察されていない。
これらのこれまでに行われてきた研究は、小規模な研究が多く、また不十分な食品摂取頻度調査票を使用していたり、総エネルギー量などが示されていないものもあった。
今回のイタリアの5地域で行われた大規模な患者対照試験では、有効に利用できる食品摂取頻度調査票が使用されており、以下のもので卵巣がん発症リスクとの有意な逆相関関係が観察された。
:ビタミンE;リスク40%低減、β−カロテン;20%低減、ルテイン/ゼアキサンチン; 40%低減、カルシウム; 30%低減。
ビタミンEとカルシウムの相乗効果もみられ、卵巣がん発症リスクが60%低減した。β−カロテン+カルシウムでは50%の低減がみられた。 α-カロテン、リコペン、β-クリプトキサンチンや水溶性ビタミンとの関連は観察されなかった。
研究期間: |
1992〜1999年 |
調査地域: |
イタリアの5地域 |
対象: |
患者 1,031名(18〜79歳、組織学的に上皮卵巣がんが確認された患者) |
|
対照 2,441名 (17〜79歳) |
|
|
各摂取栄養素別 卵巣がん発症のオッズ比
|
摂取量5分位、オッズ比(95%信頼区間)
|
1
|
2
|
3
|
4
|
5
|
P値
|
ミネラル |
カルシウム |
1
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.8 (0.6-1.1)
|
0.8 (0.6-1.0)
|
0.7 (0.6-1.0)
|
0.01
|
カリウム |
1
|
1.0 (0.7-1.3)
|
0.8 (0.6-1.1)
|
1.1 (0.9-1.5)
|
0.8 (0.6-1.1)
|
0.37
|
リン |
1
|
1.1 (0.9-1.5)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.1 (0.8-1.5)
|
0.8 (0.6-1.1)
|
0.20
|
鉄 |
1
|
1.0 (0.8-1.3)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.0 (0.8-1.3)
|
0.92
|
亜鉛 |
1
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.4 (1.0-1.8)
|
0.05
|
水溶性ビタミン |
チアミン |
1
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.3 (1.0-1.7)
|
1.2 (0.9-1.6)
|
1.1 (0.8-1.5)
|
0.31
|
リボフラビン |
1
|
1.2 (0.9-1.6)
|
1.0 (0.8-1.4)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
1.0 (0.8-1.4)
|
0.48
|
ビタミンC |
1
|
1.0 (0.8-1.3)
|
1.2 (0.9-1.6)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
0.75
|
ビタミンB6 |
1
|
0.9 (0.6-1.1)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
0.18
|
葉酸 |
1
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
0.79
|
ナイアシン |
1
|
1.1 (0.9-1.5)
|
1.2 (0.9-1.5)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.17
|
脂溶性ビタミン、カロテノイド
|
レチノール |
1
|
0.9 (0.6-1.1)
|
0.9 (0.6-1.2)
|
0.8 (0.6-1.0)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
0.70
|
α-カロテン |
1
|
0.9 (0.7-1.1)
|
0.8 (0.6-1.0)
|
0.7 (0.5-0.9)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.11
|
β-カロテン |
1
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.8 (0.6-1.0)
|
0.6 (0.5-0.8)
|
0.8 (0.6-1.0)
|
<0.01
|
β-クリプトキサンチン |
1
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.2 (0.9-1.6)
|
0.30
|
ルテイン/ゼアキサンチン |
1
|
1.1 (0.8-1.4)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.8 (0.6-1.0)
|
0.6 (0.5-0.8)
|
<0.01
|
リコペン |
1
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.0 (0.7-1.3)
|
1.1 (0.8-1.4)
|
1.1 (0.9-1.5)
|
0.25
|
ビタミンD |
1
|
0.8 (0.6-1.1)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.9 (0.7-1.2)
|
0.7 (0.6-1.0)
|
0.13
|
ビタミンE |
1
|
0.8 (0.6-1.1)
|
0.6 (0.4-0.7)
|
0.7 (0.5-0.9)
|
0.6 (0.5-0.8)
|
<0.01
|
ビタミンE、β-カロテン、ルテイン/ゼアキサンチン、カルシウム摂取量において卵巣がん発症リスクと逆相関関係が認められた。 また、ビタミンEとカルシウムの相乗効果もみられ、摂取量を3分位にして最高摂取群と最低摂取群とを比較するとオッズ比は0.4(90%信頼区間)であった。本研究結果には閉経状態や出産経歴、乳がんや卵巣がんの家族歴など様々な要因が絡んでいる。
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