第39回VICプレスセミナー(11/12)抄録


伊勢村 護 教授

『最近注目されるエピガロカテキン ガレート(EGCg)の機能と作用メカニズム』緑茶カテキンの効果はEGCgが主役
 

  ビタミン広報センター(大田区大森)では、ビタミン及び健康に関して正確で科学的根拠に基づいた、正しい最新の知見をマスコミの方々にいち早くお伝えし、ご理解いただくために、「VICプレスセミナー」を行っています。
去る2003年11月12日(水)に開催した第39回VICプレスセミナーでは、伊勢村護先生(静岡県立大学食品栄養科学部教授)に『最近注目されるエピガロカテキンガレート(EGCg)の機能と作用メカニズム』をテーマにご講演いただきました。
 講演概要は以下の通りです。

 「茶は養生の仙薬なり、延命の妙薬なり」(喫茶養生記より)とあるように、元来お茶は薬として扱われていました。お茶には様々な成分が含まれているため、効能・生理作用も多岐におよんでいます。数多くある成分の中でも主役となっているのがカテキンです。茶にはカテキンが約15%含まれていますが、その内50%以上がEGCg(エピガロカテキンガレート)です。カテキンについては、ガン予防の他に痴呆症予防、脳卒中抑制などの研究も進み、現在では抗肥満や抗糖尿病といった効果の遺伝子レベルの研究も進んできました。  
 静岡県のお茶の産地では、ガンによる死亡率が低いというデータがあります。お茶とガンとの関係では発ガンを予防するのみでなく、ガンの転移にも効果を及ぼすと思われます。動物実験では、前立腺ガンを自然に発症しやすくしたマウスに緑茶ポリフェノールを投与すると、発ガンが抑制され、さらに転移の抑制もみられました。また、ガン細胞を植えつけたマウスにEGCgを含む水を飲ませた結果、ガン細胞の肺への転移が抑制されました。別の実験では、培養したガン細胞にEGCgを加えるとアポトーシス(細胞の自殺)が観察されました。これらの研究から、緑茶中のEGCgにはガン細胞を死滅させる効果があり、ガンの発症やガンの転移を抑制する効果があると言えます。
これらの効果は、カテキンの中でもEGCgが一番強いと考えられます。  
 これらの効果を実際にヒトで検証することは困難であり、疫学調査などでは、摂取量などを正確に把握するのが困難なため、ヒトにおける緑茶とガン予防効果については賛否両論です。しかし、いくつかの研究から、1日10杯以上(EGCgとして約500mg)を飲むとガン予防やガン転移抑制に効果があると推察しています。閉経前女性において乳ガンのリンパ節転移が、緑茶を5杯以上飲むことにより抑制されたという報告もあり、これまでの動物実験の結果を考慮すると、かなりの効果が期待できると考えています。  
 ガンに対する効果以外にも、高脂肪食にカテキンを添加すると、脂肪分解が促進され、内臓脂肪蓄積量の低下や体重の減少が起こることが観察されました。また脂質の合成抑制の効果も確認され、EGCgを摂取することにより、肥満予防につながることが示唆されています。さらには、EGCgによる糖新生系酵素の遺伝子発現抑制が培養細胞系で確認され、現代病のひとつである糖尿病にも予防効果があることが期待されます。ヒトに投与した場合の安全性の問題も検討されており、その範囲で今後はヒトに対する様々な効果が検証されることを期待します。


 


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