2001年7月 No.103 |
ロシュ・ビタミン・ジャパン(株)・ビタミン広報センター共催セミナー
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血中ホモシステイン・葉酸・ビタミンB12 と動脈硬化との関連 高知県衛生研究所 森山 ゆり |
元気で健やかな高齢社会の実現のためには、一人一人が自らの判断で1 次予防に重点を置いた健康づくり対策を進めることが大切な時代 高齢化が全国に比して15 年も先行する高知県では、働き盛りの男性の突然死、寝たきりや痴呆の原因となる循環器疾患(心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患)の入院患者数は全国の2
倍であ 心筋梗塞や脳卒中・痴呆などのより効果的な対策はあるのでしょうか? 生活習慣病(がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、高血圧など)は、毎日の生活習慣と密接に関わりがあり、生活習慣(食生活、運動、休養など)が改善されることで、多くの病気の発病や進行を予防することが出来ると言われています。 ホモシステインが動脈硬化の新しい危険因子として注目されています 近年、ホモシステインが心筋梗塞や脳梗塞の新しい危険因子として注目されています。ホモシステインは食事中の蛋白質に含まれるメチオニンがシステインに代謝される際に生成される中間代謝産物のアミノ酸です。血中のホモシステインの値が高くなるとホモシステインは自己酸化を起こし、酸化過程において生じた過酸化水素やスーパーオキシドラジカルなどの酸化ストレスが内皮細胞障害を起こし動脈硬化が起こりやすくなると言われています。ホモシステインの代謝には葉酸、ビタミンB12 、ビタミンB6 が関与しています。 高知県衛生研究所では地域住民を対象として、血中ホモシステイン・ビタミンと動脈硬化との関連を検討し、血中ホモシステインが上昇しないような対策を取ることによって、動脈硬化性疾患の予防に役立てようとしています。 ホモシステインが高いグループでは頸動脈硬化の有所見者が多い 高知県地域住民の高齢者男性を対象にホモシステインと頸動脈硬化との関連を検討した結果、ホモシステインが高いグループでは、頸動脈硬化の有所見者が多いことが分かりました。
動脈硬化性変化の有無別の関連因子の比較
頸動脈硬化の関連因子の分析
Malinow らは、血漿ホモシステインの最上位の5 分位は、最下位の5 分位に比べて、肥厚した頸動脈壁を持つ確率が3.15 倍になることを報告しています。また、Selhub らは、血漿ホモシステインが14.4 μmol/L 以上の者は、9.1 μmol/L 以下の者に比し、25 %以上の頸動脈狭窄を持つ確率が2 倍になることを指摘しています。 1997 年、Sutton- Tyrrell らは血漿ホモシステインの高値が高齢者の収縮期高血圧と関連していること、血漿ホモシステイン値は正常血圧群のみにおいて動脈硬化症の危険因子であったことを報告し、1999 年我々の研究においてもOkamura らが同様に血漿ホモシステイン値は正常血圧群のみにおいて動脈硬化症の危険因子であったことを報告しましたが、さらに研究を進め、全集団においてもホモシステイン値の上位25 %群の下位25 %群に対する頸動脈硬化を有する確率は有意に高く、従来の危険因子である加齢、低HDL コレステロール、糖尿病、高血圧に加え、ホモシステイン高値は動脈硬化の危険因子であることが明らかになりました。また、血中の葉酸とビタミンB12 の低値は、ホモシステインの上昇を介して頸動脈硬化に関与する可能性が示されました。 ホモシステイン値は、葉酸、ビタミンB6 、B12 などの食事性因子と関連することが指摘されており、これらの摂取量を増やすことによってホモシステイン値を低下させることが可能であると推測されます。 *ご協力を戴きました野市町役場健康福祉課、大阪府立成人病センター、(現大阪府立健康科学センター)の皆様方、ご指導を戴きました滋賀医科大学の岡村智教先生、筑波大学の磯博康先生、大阪府立成人病センターの北村明彦先生、金沢大学の稲津明広先生、梶波康二先生、馬渕宏先生に深謝致します。 本研究は平成9 年度大同生命厚生事業団「地域保健福祉研究助成金」、平成11 年度大和証券ヘルス財団「調査研究助成金」、平成12 年度公益信託高知新聞・高知放送「生命(いのち)の基金」から研究助成を戴きました。ここに深謝致します。
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血清ビタミンC 濃度と脳卒中罹患リスク東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学研究部門・疫学 横山 徹爾―共同研究者― 伊達ちぐさ(大阪市立大学医学部公衆衛生学) /松村康弘(国立健康・栄養研究所健康栄養情報・教育研究部 /小久保喜弘(国立循環器病センター集団検診部)/田中平三(国立健康・栄養研究所)/ |
〈背景と目的〉 これまでの国内外の疫学研究によって、野菜・果物からのビタミンC摂取量が多い者では、脳卒中罹患および脳卒中死亡リスクが低いことが示唆されている。また、近年のコホート研究において、血漿ビタミンC濃度が高い者では脳卒中死亡リスクが低いことが報告されている。しかし、どのような機序によってビタミンC
が脳卒中と予防的な関連を示すのかは明らかになっておらず、いくつかの仮説が提唱されているだけである。そのうち、最も広く受け入れられている仮説は、「抗酸化仮説」であろう。即ち、強力な抗酸化物質であるビタミンC
は、LDLの酸化を妨げることによって動脈硬化の進行を防ぎ、その結果として脳卒中を予防するという仮説である。この他にもいくつかのメカニズムが仮説として提唱されているが、このような仮説を検証するにあたって、ビタミンC
と脳卒中罹患の関連を病型別に解析することは重要な知見をもたらすと考えられる。例えば、ビタミンC が主に動脈硬化性疾患である脳梗塞罹患と予防的関連を示し、動脈硬化とはほとんど関係のない出血性脳卒中(脳出血・クモ膜下出血)とは無関連ならば、抗酸化仮説を支持する根拠となるであろう。一方、もしもビタミンC
が脳梗塞罹患と出血性脳卒中の両者と関連していたならば、抗酸化仮説だけではなく、他の仮説をも考慮する必要が生ずるであろう。しかし、ビタミンC 摂取量と脳卒中罹患リスクとの関連を病型別に明らかにした疫学研究は数えるほどしかなく、いずれも主に食事調査によるビタミンC
摂取量推定の困難さから、十分な検討が行われていない。そのため血液中のビタミンC 濃度と病型別脳卒中罹患との関連をコホート研究によって調査することが望まれるが、そのような研究はこれまで皆無である。本研究では、20
年追跡のコホート研究により血清ビタミンC 濃度と脳卒中罹患リスクとの関連を病型別に明らかにし、上記のような仮説を吟味するために必要な知見を得ることを目的とする。
〈対象と方法〉 対象とベースライン調査:新潟県新発田市A- I 地区(果樹・米作を中心とした農山村地域)の40 歳以上の全住民を対象として、1977
年に、血清ビタミンC 濃度測定等の血清生化学的検 〈結果〉 〈考察〉 〈結論〉 |
心血管系疾患予防におけるビタミンC の役割 人口の高齢化は年々深刻な問題となっています。高齢化とともに、非感染性疾病、生活習慣病(慢性疾患)の増加や健康管理コストの増加が目立ってきました。生活習慣病が活性酸素による酸化が大きな原因であることはよく知られています。活性酸素種としては、一酸化窒素やオゾン、お酒、紫外線、たばこなどがあげられます。これらの影響により、神経性疾患、老化、ガン、心疾患、白内障、加齢黄斑変性などの疾病が発症するのです。ヒトにはこれら活性酸素の攻撃に対する防御機構として、スーパーオキシドディムスターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素が備わっていますが、ビタミンC やビタミンE 、カロテノイドなどの抗酸化物質による防御機構も重要な役割を果たしています。これらの抗酸化物質は食事やサプリメントから摂取できます。 本日は抗酸化物質の中のビタミンC に焦点をあて、これまでの研究結果をご紹介致します。 まず、疫学的証拠ですが、Eichholzer らは血漿中ビタミンC 濃度が0.5mg/L 以下では心血管系疾患による死亡率が増加することを、またNyyss o nen らはフィンランド人を対象にした調査で低ビタミンC 濃度(11.4 μmol/l あるいは0.2mg/ml 未満)は冠血管系心臓病の危険因子となることを証明しました。 Western Electric Company Study ではビタミンC 摂取量と死亡率との関連が報告され、Duffy らの研究では、高血圧治療におけるビタミンC の効果について報告されました(図1 ) さらに冠動脈系心疾患による死亡率の減少(Losonczy,1996 )や、アテローム性動脈硬化進行の抑制(図2 )などには、ビタミンE との併用により、より効果のあることが証明されました。 以上のように様々な研究が行われてきた結果、生活習慣病予防には食生活が大きく関わっていることがわかりました。今後高齢化が進むなか、各個人による予防が重要になってきます。各栄養素の役割を認識し、積極的に抗酸化栄養素の摂取などを心がけていただきたいです。
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食事摂取基準検討委員会 公開研究会 「食事摂取基準の歩み」開催報告主催:(社)日本栄養・食糧学会、食事摂取基準検討委員会 協賛:ILSI- Japan 、ビタミン広報センター、明治乳業(株) 日時:平成13 年5 月7 日 於)京都国際会館エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社 ディートリッヒ・ホーニッグ |
ビタミン推奨摂取量の最近の動向 栄養所要量(RDA )は1943 年にアメリカのNRC によって初めて公表された。その目的は「国家の存続と関連する国民の適切な栄養状態の維持のために役立つ基準を示すこと」であった。その後、RDA の利用目的は広がりを見せ、現在では、食品の供給計画及び調達、食品の摂取調査結果の解釈、栄養表示の根拠としても利用され役立っている。 近年にいたって、より多くのビタミンの役割についての科学的な証拠が発見され、多くの諸国で、専門家達がこれらの科学的証拠に基づいた推奨量について統括的な報告をしている。USFNB (アメリカ食品栄養審議会)はビタミンの必要量の評価に関して新しい取り組みを確立した。その新しい取り組みとは主にビタミンに関する分子レベルでの基礎研究、疫学調査、生化学的研究そして臨床試験についての新しい報告に基づくことである。この新しい考え方はパラダイム変動を起こした、そして欠乏症(臨床的な徴候や状態によって認められたもの)予防のための栄養素の必要量だけを取り入れるのではなく、最適な健康に貢献し、生活の質を高める(心血管疾患・ガン・眼疾患・骨粗鬆症のような生活習慣病〈慢性疾患〉のリスクを低減させるという評価ができる機能的なパラメーターによって評価される)ための栄養素の必要量ということにある。DRIs (Dietary Reference Intake :食事摂取基準)は各栄養素についての集合的な用語であり、欠乏症予防から生活習慣病〈慢性疾患〉のリスク低減への役割の可能性にわたる範囲をカバーしている。新DRI は多くの情報を基に、特にヒトに関するデータに力点をおいて、まとめられた総説の結果として出来上がったものである。DRI は4 つの指標から構成されている。これら各構成要素の定義は下記に示す。 推定平均必要量(Estimated Average Requirement EAR ):その集団における50
%の人が必要量を満たすと推定される1 日の摂取量 アメリカの他に、いくつかの国(ドイツ/オーストリア/スイス、フランス、日本、中国)が最近新しい所要量を発表し、その他の国では現在進行中または検討準備段階である(例;オーストラリア、オランダ、東南アジア諸国,北欧諸国)。許容上限摂取量は現段階では、アメリカ、日本、中国のみで設定されている。ドイツ、スイス、オーストリア、フランス、日本、中国、韓国、アメリカ/カナダにおいての最新の評価報告を以下に示す
各国のRDA 委員会もまた、知見との格差を少なくする、推奨量の満足できる評価ができる、そして各栄養素の許容上限摂取量を設定するために、さらに必要な研究が何かについて丹念に調査された。
今、各国政府機関は、現在確立されていない「いわゆる強化食品や栄養補助食品」に表示されているビタミン含有量の表示について、その根拠となっているRDA
表示を再評価における法的な骨格にこれらの新しい科学的根拠に基づいた推奨量を取り込むことを検討している。欧州委員会SCF (食品科学委員会: *1 :原文ではFolate ;欧米では通常、食品由来の葉酸を示している。 |
第六次改定日本人の栄養所要量に関する基本的な考え方と問題点 はじめに 基本的な考え方 問題点 参考)サプリメントアドバイザー制度について 1 .目的と役割 2 .サプリメントアドバイザーに対する教育プログラム 3 .認定のポイント |
ルテイン/ゼアキサンチン摂取とAMD 本研究では失明につながるAMD (Age- related Macular Degeneration:加齢黄斑変性症)と、カロテノイド、ビタミンA,C,E との関連を調査した。 対象: 方法: 結果:
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