2002年2月 No.105 |
日本ビタミン学会第54 回大会を主催するにあたって東邦大学医学部大橋病院 教授 橋詰 直孝 |
〈はじめに) ビタミンという名称は生命に必要なアミンという意味なので基調テーマは「ビタミンと生命の輝き」としました。最近ビタミン学の研究は著しい進歩があり、専門外であると理解し難い面もありますので演者には分かり易く解説して下さるようお願いするつもりです。そして、会場が分散すると聞きたい講演も聞けないことがありますので大ホールに一同に集まっていただきディスカッションをするように試みました。その結果、一般演題はポスター発表となってしまいましたがポスターを軽んじている訳ではありません。12 題を厳選し大ホールで発表していただきます。以上が本大会の特長です。 〈要旨〉 今回は初めての試みとして平成14 年4 月27 日(土)に日本ビタミン学会第54 回大会関連市民公開講座を産経新聞が主催で開きます。テーマは「ビタミンと生命いのちの輝き―ビタミンとスキンケアー」で場所はサンケイホールで日時は平成14 年4 月27 日13:00 ―16:20 です。4 月25 日、26 日、27 日と長くなってしまいますが多くの方々のご参加をお待ち申し上げております。
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ルテインとAMD 心疾患やがん、加齢性眼疾病などの生活習慣病は、高齢化に伴い増加している。この生活習慣病の増加により、栄養学を含め予防の観点からの研究が進行している。近年、ルテインやゼアキサンチンが加齢黄斑変性(AMD )や白内障などの深刻な眼疾病のリスクを低減させることが証明されつつある。AMD は高齢者における失明の原因の一つであり、視覚障害を引き起こす。いくつかの研究から、アメリカで1,000 万人に軽度の症状あり、45 万人またはそれ以上の人がAMD 進行による障害を負っている可能性が推測されている。AMD 発症リスクは加齢により増加し、また男性より女性のリスクが高い。AMD の治療法は未だ確立されていない。このため、予防や進行を抑制する方法の研究が進められている 。 ルテインとAMD (加齢黄斑変性)との関連については、本ニュースレターでも紹介してきた(VIC ニュースレターNo.98,99, 101,103 参照) ルテイン・ゼアキサンチン摂取量(5 分位)と眼疾病発症リスクのオッズ比 ルテインとは? ・カロテノイド中のキサントフィルの一種で、野菜、果物、植物に豊富に含まれている。とくに、ケール(キャベツの一種)、ほうれん草、ブロッコリーなどに多く含まれる。 分子式:C40H56O2
ルテインの生物活性 サプリメントから摂取したルテインは吸収されやすく、速やかに血中濃度が上昇する。 今後のルテイン研究 ルテインについての研究は大きく進歩したが、今後も各分野でのさらなる研究が必要である。 (JAMA Vol.4,No.2 より)
ルテイン摂取と結腸がんの関係 食事からのルテインやその他のカロテノイド摂取と結腸がんとの関連を調査するため、患者1993 名・対照2410 名を対象に研究を行った。
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神経管欠損症(NTD )児出生における葉酸強化食品の影響を評価するため、アメリカFDA が穀類製品への葉酸強化を義務化する前後でNTD
発症調査を行った。 調査期間と対象:1990 年1 月〜1999 年12 月までの間に、アメリカの45 の州とワシントンDC で出生(生存者)した際の出生証明書により調査を行った。 結果:出生証明書によるNTD 疾患の罹患は、葉酸が食品強化される前は出生数10 万人あたり37.8 人だったが、葉酸の強化が義務化された後に妊娠した女性の子供では30.5 人に減少した。これは19 %減少したことになる。また、同期間において、出生前の診断または中絶による影響について把握するため、妊娠7 ヶ月以降に診断を受けた者または出生前の妊婦ケアを受けなかった者が出産した子供のNTD 罹患率も調査したところ、出生数10 万人あたり53.4 人から46.5 人に減少した。妊娠後7 ヶ月以降は、NTD と診断されても中絶することはまれであり、出生前診断や中絶によるNTD 罹患率への影響は少ないと考えられる。 |
新ビタミンC 所要量の提案(アメリカ)
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最近アメリカでは、成人男性の所要量を基に、成人女性のビタミンC 所要量が75mg/日と設定された。
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ヒト赤血球細胞膜でのアスコルビン酸フリーラジカルの再生
〈要旨〉細胞質膜ではアスコルビン酸がα- トコフェロールを再生することにより脂質の過酸化を防止しており、細胞質膜におけるアスコルビン酸フリーラジカル(AFR )の還元はアスコルビン酸を保存する効率的なメカニズムである。赤血球ゴースト膜はAFR 存在下でNADH を酸化することが明らかになっている。本稿では、AFR 還元酵素がアスコルビン酸酸化酵素によるアスコルビン酸の酸化を防止すること、およびゴースト膜がAFR の定常状態濃度を蛋白・NADH 依存性に低下させることから、ゴースト膜のNADH 酸化作用がAFR 還元酵素によるものであることを報告する。AFR 還元酵素はNADH およびAFR (〈2 μM )の両者に対して見かけ上高い親和性を有する。透過性の高いゴースト膜で測定すると、還元酵素には内膜型活性(両基質部が細胞質膜面にある)と、細胞内NADH を用いて細胞外AFR 還元を媒介する膜貫通型活性がある。しかし、膜貫通型活性はゴースト膜で測定される総活性の約12 %にすぎない。また、ゴースト膜のAFR 還元酵素活性は、界面活性剤Triton X- 100 に対し感受性かつカテプシンD による酵素消化に対し不感受性であり、これによりNADH 依存性フェリシアン化還元酵素と区別することができる。このNADH 依存性AFR 還元酵素は細胞質膜内面の重要部位におけるアスコルビン酸の再生機能を果たしている可能性がある。
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ルテインとアテローム性動脈硬化症の進行 (Dwyer Jh ら,Circulation 2001;103:2922- 2927 ) |
以下の3 つの研究@疫学的研究A培養実験B動物実験からルテイン多量摂取は、アテローム性動脈硬化の進行を抑制することが示唆された。 @疫学的研究: 40 〜60 歳の男女480 名を対象に、血漿中ルテイン濃度と頚動脈の内膜- 中膜肥厚(IMT )の増加との関連を調査した結果、逆相関関係であることが判明した(図1 )。研究期間は18 ヶ月。 図1 血漿ルテイン濃度とI MT 増加度との逆相関関係 (□:男性248 名、◇:女性214 名)
A培養実験: ヒト大動脈壁の内皮・平滑筋細胞を用い、培養実験にてLDL 酸化におけるルテインの影響について研究を行った。以下の2 つの方法にて化学走性を分析:遊走単球は顕微鏡にて測定 A .細胞に各濃度のルテインを加え一晩培養後、各細胞に同濃度のLDL をそれぞれ加え8 時間培養した。 図2 A LDL 酸化と単球化学走性におけるルテインの影響 (*p <0.05)
B .LDL に各濃度のルテインを加え4 時間培養後、細胞を加えさらに8 時間培養した。 図2 B LDL 酸化と単球化学走性におけるルテインの影響 (*p <0.05)
結果: ルテイン濃度の増加に伴い、用量依存的に単球の化学走性が減少。特にルテインで前処理をした細胞において、化学走性が劇的に抑制された。単球の遊走を抑制するルテイン濃度100nmol/L は、ヒトHDL 中のルテイン濃度とほぼ同程度である。 B動物実験: アポE 欠損マウスとLDL 受容体欠損マウスにルテインを補給すると、動脈病変が減少した。 図3 各アポE 欠損マウスの大動脈弓における病変のサイズ
〈LDL 受容体欠損マウス〉 |