1998年9月 No.92

モノカインとビタミンEについて

北海道大学・歯学部・生化学教室   坂本 亘

〔要旨〕
    マクロファージはガス状分子O2−、NO、脂質誘導体PGE2を初めとして、IL-6、TNF-α、MIFなどのモノカインを分泌し、炎症・免疫反応に大きく関与している。ビタミンEは単なる抗酸化作用だけでなく、マクロファージのmodulationを介してモノカイン分泌を制御するbeyond antioxidant functionを有していることが明らかとなった。
1.はじめに
マクロファージは種々なる刺激に対して、prostaglandins、leukotrienes*、PAF、活性酵素モノカイン*など100種類近いケミカルメディエーターを産生・放出し、炎症反応や恒常性に大きく関与している。そのなかでもIL-1*、IL-6、IL-8、TNF-α、MIFなどのモノカインは血管内皮細胞、平滑筋細胞、T細胞などとサイトカインネットワークを形成し、炎症反応、免疫反応などの主要な細胞間情報伝達物質として機能している。一方、ビタミンEは抗酸化作用以外に、細胞代謝や遺伝子調節を介して種々なる生理作用を発揮する“Beyond Antioxidant Function”として、免疫、炎症との関わりが指摘されている。しかしながら、その詳細な作用機序については十分に解明されていない。我々はこの点を明らかにする為に、多彩な生理機能を有するマクロファージのmodulationをめぐって、モノカイン産生とビタミンEの関係について検討した。

2.モノカインと炎症
炎症性のサイトカインであるTNF-α、IL-6は主に単球、マクロファージが産生するモノカインであるが、リウマチ様関節炎*患者の関節滑膜ではこれらモノカインが高濃度に検出される。このことはリウマチ様関節炎においてはマクロファージが主体であることを示唆している1)。一方、TNF-αは血管内皮細胞に対して 

procoagulant活性の亢進、prostaglandins、PAF産生の亢進、白血球付着能の亢進等を介して血管損傷を惹起し、動脈硬化症の進展に深く関与していることが指摘されている2)。最近、このTNF-αの産生を亢進させるモノカインとしてMIF(macrophage migration inhibitory factor ;マクロファージ遊走阻止因子)が注目されている3)。MIFはin vitroの実験からマクロファージの遊走を阻止する因子として発見されたサイトカインであるが、最近の研究成果からマクロファージを炎症部位に集め、炎症、免疫反応を惹起し、特に遅延型アレルギー反応に密接に関与することが明らかにされている。すなわち図1に示すように、血中MIFは急性呼吸窮迫群やアトピー性皮膚炎患者において、TNF-α、IL-8などの炎症性サイトカインの上昇と共に、著明に増加している4,5)。 
 一般に、マクロファージの活性化に伴うモノカインの誘導、分泌には酸化ストレスによるNF-kB、AP-1等の転写因子の制御あるいはシグナル伝達が関係していると云われている。事実、Comstock et al、は血中の抗酸化能ビタミン(β-カロチン、ビタミンA、ビタミンE)は関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡患者において健常人に比して低値であることを報告している6)。 
図1ヒト健常人ならびにアトピー性皮膚炎患者の血清MIF量

3.ビタミンEとモノカイン
我々はこれまでに免疫担当細胞の一つ、マクロファージとその機能をめぐってO2−、PGE2産生とビタミンEの関係について研究してきた。その結果、ビタミンEが化学当量論的な抗酸化作用以外に、beyond antioxidant functionとしてマクロファージの修飾を介してO2−、PGE2、産生を抑制することを明らかにした7)
Meydani dt al.もビタミンE補給のin vivo実験より同様の成績を得ている8)。彼等はまたビタミンEがPGE2産生の抑制作用を介して、T細胞の増殖、IL-2産生の亢進より免疫機能を増強することを併せて報告している。しかしながら、IL-6、TNF-α、MIFなどのモノカイン産生、放出に対するビタミンEの作用については未だ十分に明らかにされていない。我々はこの点を明らかにする為に、体重350-400gのWistar系雄ラットに5mgのビタミンEを6日間連続して腹腔投与し、マクロファージの修飾を行ない、モノカインとの関係について検討した。その結果、マクロファージのビタミンE含量は未処置群の1.2±0.4ng/106cellに対し、ビタミンE処置群では384.4±76.1ng/106cellsと著増することがわかった。次にこのようにビタミンEを大量に取込んだマクロファージを用いて、マクロファージのモノカイン産生とビタミンEの関係について研究した。モノカインの分泌量は各種刺激剤存在下で14時間培養されたマクロファージのmediumについて、それぞれの特異抗体を用いるELISA法で定量した。その結果、未処置群マクロファージのMIF、IL-6、TNF-αの分泌はカルシウムイオノフォア(A23187)、ホルボールミリステートアセテート(PMA)、リポ多糖(LPS)各刺激により増加することがわかった(表1)。一方、ビタミンEにより修飾を受けたマクロファージではその分泌は強く抑制された。 
特にMIFの分泌は無刺激の0.77±0.23ng/mlに対して、各刺激にかかわらず0.34±0.11ng/ml〜0.58±0.14ng/mlの低値を示した。尚、未処理マクロファージ群では無刺激で2.27±0.20ng/ml、各種刺激剤で2.64±0.25ng/ml〜4.12±0.58ng/mlであった。一般にモノカインの分泌はprotein kinase A、protein kinase C、細胞内カルシウム流入等を介するexocytosis*によるものと考えられる。従ってビタミンE修飾を受けたマクロファージのPMA、A23187刺激による各モノカインの分泌抑制はビタミンEの細胞膜修飾により、細胞内カルシウム流入、protein kinase Cが阻害された為であると思われる。事実、我々は既にビタミンEが膜画分に取込まれ、細胞内カルシウムの流入抑制、protein kinase C阻害を介して、O2−、PGE2産生を阻害することを明らかにしている7)。しかしながら、tyrosine kinase系の細胞内情報伝達を介するLPS刺激において、ビタミンEの抑制作用がMIFとIL-6、TNF-α間で異なる理由については現在のところ不明である。
4.まとめ
モノカインは細胞間相互作用を担うタンパク質のメディエーターとして、炎症・免疫反応に大きく関わっている。それゆえにモノカイン産生を制御することは新たな治療法につながる。今回、マクロファージのモノカイン分泌とビタミンEの関係について考察した。その結果、ビタミンEは単なる抗酸化作用だけでなく、beyond antioxidant functionとして細胞のmodulationを介して細胞内シグナル伝達系に作用している可能性が明らかとなった。今後、解明されるべき点は数多く残っているが、このような新しい別の観点から、臨床治療薬としてのビタミンE研究の進展が待たれる。 
〈参考文献〉 1.McInnes, I.B. et al. Nature Med.,3, 189-195, 1997 2.Erl, W, et al. Am.J.Pysiol., 237, H634-640, 1997 3.Calandra, T. et al. J.Exp.Med., 179, 1895-1902, 1994 4.Shimizu, T. et al. Biochem. Biophys.Res.Commun, 240,173-178, 1997 5.Donnellt, S.C. et al. Nature Med., 3, 320-323, 1997 6.Comstock, G.W. et al. Ann.Rheum. Dis., 56, 323-325, 1997 7.Sakamoto, W. et al. In:Food factors for cancer prevention(Ohigashi, H. et al. eds.) Springer-Verlag, Tokyo.pp.460-464, 1997 8.Meydani, S.N. et al. J.Am.Med.Assoc., 277, 1380-1386, 1997 9.Sakamoto, W. et al. Biochim.Biophys.Acta, in press, 1998 

*leukotrienes プロスタグランジン類の一種で、前駆体脂肪酸のアラキドン酸の5-リポキシゲナーゼ代謝物である。
*モノカイン 単核性食細胞(単球やマクロファージ)が分泌する種々の生物活性をもつ高分子の総称。 インターロイキン(IL-1)、癌壊死因子(TNF)などが含まれる。
*IL-1 マクロファージにより産生されるモノカインで、その標的細胞は、免疫系、結合組織系、中枢神経系などさまざまである。
*リウマチ様関節炎 原因不明の慢性関節炎を特徴とする疾患で男女比は1:4 発病原因は不明であるが、多因子性の遺伝的素因、とくにHLA-D4との関連およびウィルス感染が注目されている。
*exocytosis 合成された物質が分泌顆粒として細胞内から細胞外へ放出される現象をエキソサイトーシスと呼ぶ。


 
 

国際会議報告(The 3rd ISSFAL) 

トリグリセリド(TG)値を低下させることにおけるn-3系の長鎖の多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の役割
(PUFA Newsletterより) 
ISSFAL(The International Society for the Study of Fatty Acids and Lipids:国際脂肪酸及び脂質研究の国際会議)、は2年毎に会議を開催し、その第3回が6月2-5日、フランスのリオンで開催された。これはRudolph Riemersma教授(イギリス、エディンバラ大学)とWilliam Harris教授(アメリカ、カンサス大学)が共同で座長を務めたTGについてのシンポジウムの主要点をまとめたものである。

危険因子としてのTG-疫学研究
TG値の上昇と虚血性心疾患との関連性は1950年代にアメリカのMaryland大学のMichael Miller教授が指摘して以来よく知られているが、1980年代まではその効果は、コレステロールに起因するとされてきた。Framingham研究は、TG値は特に女性で、冠状動脈疾患(CHD)の危険性と強い相関があることを示した。これらの効果は、他の共存する変動要因で調整後、しばしば低下するが、最近の研究で、TG値自体が危険因子であることが確認された。1996年HokansonとAustinはTG値の1mmol/lの上昇はCHDの危険性を男性で14%、女性で37%上昇させることを示した。これらの数字は、14,000人を対象とした空腹時TG値を評価した1996年のシアトルの介入試験の結果の解析により、Austinにより、確認された。3,000人の健常な男性を対象としたコペンハーゲンの研究は、今年始めに「学術雑誌Circulation」に発表され、同様な結果が得られている。TG値からも、患者が動脈造影で疾病であろうことを予測できる。最近の研究でも、また、TG値と頸動脈虚血との相関性が示された。TG値を2倍に上昇させることは、男性で危険率を50%、女性では2倍にするので、安全な上限値がどれ位なのかが問題となる。
1993年のアメリカの国立健康研究所(NIH)のコンセンサスパネルはこの値を200mg/dlに設定し、Millerは設定値は100まで半減すべきと主張している。NIHが勧告したTG値およびコレステロール値の上限は両方共に、200mg/dlに設定されている。アメリカの平均コレステロール値は200位で平均TG値100(男性112、女性88)のほぼ2倍である。長期間に渡るボルチモアの心筋梗塞患者についての追跡調査は、全ての他の因子で調整しても、TGの最低値群は心筋梗塞の発症率が最も少ないことが示され、このことは、より低い設定値についての議論への支持を更に深めることになった。次の段階はTG値を低下させることで、CHDの発症への効果を示すと思われる介入試験を企画するべきである。

危険因子としてのTG値−臨床的視点
ドイツミュンヘン大学のPeter Schwandt教授は血漿TGの高値はCHDの危険率を2倍にするだけでなく、その他4つの主な脂質疾患の要素でもあるということを指摘した。
・高カイロミクロン血症:膵炎及び急性腹部疾患に関連する。
・慢性高TG血症:動脈硬化症及び合併症(CHD、発作、末梢血管疾患)の危険因子となり得る。
・家族性のリポタンパク質低下性疾患:血管性合併症を高い頻度で起こすTG代謝の異常疾患である。
・家族性の合併した高脂血症:高TG値、動脈硬化症の高い頻度に関係している。
Schwandt教授が観察したところによると、U型糖尿病はTG値の高値及び微小血管障害に特徴があった。
どのようにして、これらの疾患を治療すべきなのか?Schwandt教授は、最初治療の目標となるのは、糖尿病患者では150mg/dlを目標とするべきであるので、この患者を除くと200mg/dl以下に血清TG値を低下させるべきであると示唆している。体重の減少は、LDLコレステロールを低下させるが、不幸にもコレステロールと比較して糖尿病では、その低下がより少ない。患者へのアドバイスには、より良いライフスタイル、食事と運動、アルコール摂取の低減、禁煙が含まれる。魚油投与は、特に糖尿病患者に何らかの危険性を認められないので、含まれるべきである。薬剤による治療は、重症の場合には用いられるべきである。

冠状動脈疾患の発症率:食事と脂質
一般に、魚油を含めて、良い食事は冠状動脈疾患の危険性を減少させるということが信じられているとエディンバラ大学のRiemersma博士は述べている。しかし、大衆に食事のアドバイスを受けるように説得するのは難しい。それでもやはり努力することに価値がある。タート介入試験では、CHD患者に脂肪に富んだ魚をもっと取るようにアドバイスした結果、2年以上に渡って死亡率が低下した。これとは別の食事介入試験、リヨン心臓介入試験では、薬剤による効果よりも良い結果が得られた。シンバスタンチンは血清コレステロールを25%、CHDによる死亡率を32%減少させた。しかしながら、食事による介入試験の結果は、薬剤試験での患者の臨床治療と同様なインパクトを得るのに失敗した。多分、食事による介入試験は、企画と規模を含め、幾つかの重大な欠陥があったと思われている。
スコットランドの試験は彼らの食事を変化させるように説得できるか?エディンバラ大学Riemersma博士の研究では、全てのCHDの患者に果物や全粒パンの摂取量を増加したり、フライドポテトの摂取量を減らそうとする努力がみられた。食材料やマーガリンの自由摂取について集中的にカウンセリングを受けた群(1人当り1日最高4時間)は、試験の目標である食事の脂肪酸組成を変化させることができた。しかしながら、野菜や、低脂肪乳の摂取量を増やすことはできなかった。よって、全ての食事を変えることは、多分非現実的なことであろう。しかし、初期試験の問題がでてくるかもしれないが、マーガリンや油、脂肪酸サプリメントを用いた第2次の試験を行うべきであろう。 

食後のTG値へのn-3 LCPUFAの効果
TG値は食後上昇し、Physicians' Health Studyではこの増加量は現在の動脈硬化症の程度とその進行に比例することを示している。アイルランド・ダブリンのTrinity CollegeのHelen Roche博士は、閉経していない女性と比較して、男性では食後のTG値の上昇は少なく、年齢に伴い上昇し、女性では閉経後急速に悪化することを指摘している。もし、このTG値の変化の様子をグラフで示すと、曲線より下の面積が冠状動脈疾患(CHD)の直接の目安となる。脂肪を消化するのに、4〜6時間要し、大部分の人々が1日に3回かそれ以上の食事を摂取するので、脂質はほとんど一定の食後状態に保たれることを意味している。
しかしながら、TG値の上昇は、中程度の量の魚油によっても減少しうるとRoche博士は述べている。その有効性は用量に関連している。LCPUFAの摂取が増加すると共に、食後のTG値は低下する。RocheとGibneyは、空腹時のTG値等が同レベルの2群に、1日にエイコサペンタエン酸(EPA)0.54gとドコサヘキサエン酸(DHA)0.36g或いはプラセボを16週間に渡って与えた。その結果、空腹時血中TG値を20%減少させ、曲線より下の面積も30%減少した。投与量及び治療期間を変えた他の研究者による試験でも、全て、空腹時TG値で同様な減少を示した。低服用量でも20〜30%の低下が見られた。

血漿TG値へのEPAとDHAの効果
LCPUFAの効果に関する研究の大部分では、DHAとEPAを同時に投与できる魚油を用いて行なわれてきた。ホフマン・ラ・ロシュ鰍フPeter Weber博士は、EPAとDHAを比較することで、より進んだ段階の議論を行なった。
精製EPAと精製DHAを比較したコントロールを用いた臨床試験は双方のPUFAは空腹時でも食後でも一貫して有効であった。精製したEPAを1日2.7〜4.0gを用いた3つの研究は、TGを16〜33%低下させた。1日DHA1.25〜6g与えると、TGを17〜26%低下させ、同様な結果を示した。多様な研究では、脂質画分への有効性も認られている。。DHAは高密度リポタンパク質(HDL)を増加させ、EPAは低密度リボタンパク質(LDL)の僅かな低下と関連していた。

リポタンパク質代謝とLCPUFAの効果
アメリカのカンサスシティー、ミズーリ大学のメディカルセンターのWilliam Harris教授は、よく企画されたプラセボコントロールのクロスオーバー又は平行研究で示された血清脂質とリポタンパク質への魚油の効果についてコメントした。
最近及び報告済みのインドでの研究は、プラセボに対する魚油とα-リノレン酸(ALA)を含有するマスタード油を直接比較した。2群にほぼ同量のLCPUFAを投与した(そのためマスタード油は大量に必要であった)。しかしながら、マスタード油は狭心症、不整脈、心臓欠陥、全冠状動脈疾患の発症について魚油とほとんど同様の効果があった。『これは、魚油が冠状動脈疾患を本当に低減させる結果を示した最初の結果である』とHarris教授はコメントした。
 

要約:安全性と勧告
アメリカ・ポートランドのOregon Health Sciences大学のWilliam Connor教授は、安全性について意見を述べてこのセッションを終了した。北西沿岸地方に住むエスキモー及びインディアンと同様に、長江の沿岸の中国人を含め、多くの土着の人々が1日50gといった大量の魚油を数千年以上摂取し続けていることを聴衆に想起させた。彼らが、生存し続け、繁栄していることは現在患者に投与されているより少量投与量の安全性についての証明である。
数千人の患者を含む多数の臨床試験にも拘らず、理論的な危険性は確認されていないが、理論的には危険性は存在する。これらは、幾つかの考えからでたものである。エスキモーは発作の高い発症率を示すが、臨床試験での患者は如何なる発症率の増加も示さなかった。ペルオキシド生成の増加、糖尿病患者における血糖値のコントロールの悪化、又は発ガン性に対する恐れはみられなかった:事実LCPUFAはガンの発症を遅らせるらしい。
数十年以上、くる病の予防のために、タラ肝油が子供に投与されたが、茶匙1杯分の用量は、LCPUFAを約1.25g含有している。これは、『ほぼ治療レベル』であり、魚油カプセルには酸化の増加を抑制するために、ビタミンEが含まれている。大用量の魚油は血小板数を減少させるが、総血小板容量には変化がなく、魚油のサプリメントを与えられた患者が心血管手術を受けても出血の増加はなかった。
インスリン非依存性糖尿病では、初期研究で魚油投与後血糖のコントロールの低下が見られた。しかし、最近のより大規模のより良くコントロールされた試験はこのようなことを確認されなかった。更に、糖尿病患者では魚油により、VLDLとTG濃度が低下した。
それ故、魚油やその成分であるLCPUFAs、即ちEPAとDHAを勧めることは、論理的であり、実際的でもある、とConnor教授は述べている。精製された製品、即ち50%或いはそれ以上のEPAとDHAを含むものを利用することは、特に論理的であり、必要とされる服用量を1日6g或いはそれ以上から1日1〜2gへ減らすことができる。魚油は、低脂肪食、運動、減量と並行して、高TG血症の最初の治療の選択肢とするべきであるともコメントし、コレステロール低下剤の危険性をもたないことに注目すべきとしている。Connor教授は、彼自身の長い臨床経験で、患者はコレステロール低下剤と異なり、通常魚油を摂取していることを観察している。一般人では予防方法は新鮮な魚の摂取に基づくべきである。『もし、魚を摂取できなければ、また嫌いであれば、更にアレルギーがある場合には、魚油をとるべきである』とConnor教授は結論づけている。 
〈学会情報〉
●Antioxidants and Oxidative Processes in Health and Foods  November 5-6, 1998  Campus Center University of Massachusetts  Amherst, MA 01003  edecher@foodsci.umass.edu
●International Conference on Diet and Prevention of Cancer  May 28-June 2, 1999  Tampere, Finland ICDPC '99  Congress Management Systems  P. O. Box 151 FIN-00141 Helsinki, Finland  tel +358-9-175-355 fax +358-9-170-122
●Wth European Congress of Gerontology  Berlin 7-11 July 1999  Geber + Reusch Habichtsweg 11  D-60437 Frankfurt  phone:(49)-69-505229 Fax:(49)-69-503978 

 
 

心血管系疾患

(Antioxidant Vitamins Newsletterより) 
ビタミンCとEの脂肪による内皮系機能損傷の予防

適量以上の脂肪摂取によって、動脈硬化が発症すると考えられているが、それは、内皮系機能の損傷が原因である。 
高脂肪食によって、主要動脈での内皮系機能(Flow-mediated血管拡張の測定)が数時間にわたって低下したという報告があった。
一方、低脂肪食では、上記のようなことはなかった。
抗酸化ビタミンの食前摂取が、血管拡張に対する高および低脂肪食の作用に影響するか否かという試験検討が、アメリカのメリーランド(Maryland)大学で最近なされた。
この試験の概要
被験者:健康人の志願者
摂取食事:(1)高脂肪食の朝食;脂肪50g、エネルギー900kcal
(2)高脂肪食の朝食;脂肪50g、ビタミンC 1gとビタミンE 800I.U.を朝食前に摂取
(3)低脂肪食の朝食;脂肪0g、900kcal
評価測定法:上腕でのFlow-mediated血管拡張試験、食後1時間毎に6時間後まで
結果:ビタミンC及びEを食前摂取しなかった高脂肪食群は、低脂肪食群では認められない、血管拡張の実質的な変化を示した。(図)
一方、ビタミンC及びEを食前摂取した群は、高脂肪食による上記の反応を生じることなく低脂肪食群とほぼ同じ反応であった。
 結論:短期間の高脂肪食による、内皮系機能の損傷は、酸化的損傷であり、抗酸化ビタミンの補給によって、その損傷が予防される可能性がある。 

処理動脈の再狭窄(restenosis)に対するプロブコールと 抗酸化複合ビタミン剤の役割 

冠血管形成術は術後restenosisが高頻度で発症することから、長期的な有用性が限られている。(restenosis処置動脈の再狭窄)
血管形成術部位に発生した酸化代謝物が、restenosisを起こす連鎖反応を誘導するらしい。それ故に、抗酸化物質がその(restenosis)発症を予防する可能性が考えられる。 
カナダのモントリオール心臓研究所(Montreal Heart Institute)で、この可能性を実証するための二重盲検比較対照試験が行われた。
試験の概要は次のとおりである。
被験者:冠状動脈疾病患者317名
摂取物質(1日量):(A)プロブコール(抗酸化薬)
(B)抗酸化栄養素混合剤
β-カロテン:30000I.U.
ビタミンC:500mg
ビタミンE:700I.U.
(C)プロブコール及び抗酸化栄養素混合剤(B群と同量)
(D)プラセボ
摂取期間:プロブコール投与前1ヶ月間と投与後6ヶ月間
結果:プロブコールは、有意にRestenosisの発症頻度を低下させた。しかし、抗酸化栄養素混合剤では、効果は認められなかった。
考察:プロブコールのもつ抗酸化活性とは異なる他のいくつかの作用機作によって、今回の有効性が得られた可能性がある。しかしながら、Hodisらは、血管形成術とビタミンE(100IUあるいはそれ以上を毎日摂取)の組み合わせで、コレステロール低下剤を摂取している156名の患者さんを用いた試験で、冠状動脈損傷の進行が抑制されたことを1995年に報告している。この試験では、プラセボ群では、ビタミンEのこのような作用は認められなかった。
冠状動脈疾病患者で薬剤治療を受けている患者さんに対して、ビタミンEは補助的な改善効果を持つことが考えられる。
出展 N Eng 1 J Med 337 (6) : 365-372 (7 Aug 1997)

心臓病専門家による抗酸化剤の使用状況
アメリカの心臓病専門家を対象に行われた、心臓病予防のための栄養補助食品摂取調査
 調査対象:心臓病専門家 181人
結果:〈使用状況〉抗酸化剤  44%
アスピリン 42%
抗酸化剤+アスピリン 28%
〈抗酸化剤〉ビタミンE  39%
ビタミンC  33%
β-カロテン 19%
出典 Am J Cardiol 79 (11) : 1558-1560(1 June 1997) 


 
 
 

サンスクリーンに関する一問一答 

10.サンバーンや皮膚の色素沈着に影響を与える重要な要因として何がありますか?
a.光の強さ
− 緯度  − 標高
− 季節  − 日中の時間帯
− 暴露時間の長さ
− ガラス、雲、水や被服の光透過性
− 砂、雪や草からの光反射
b.スキンタイプもサンバーンや皮膚の色素沈着に影響を与える。
11.AHA(アルファヒドロキシ酸、フルーツ酸とも言われる)を含む化粧品は表皮細胞の剥離に用いられます。この様な製品を使用している場合、太陽光を避けることは重要ですか?
AHAを含む化粧品を使用するのは、皮膚に対する更新効果があるからです。すなわちAHAの使用は皮膚に刺激を与えることになり、その結果皮膚は紫外線に対してより敏感になります。
AHAを含む化粧品は、サンスクリーンがその組成分の一つとして含まれている必要があり、もしくは少なくともSPF9あるいはそれ以上のサンスクリーンと共に日常使われるべきです。
12.皮膚の色が黒い人もサンスクリーンを用いるべきですか?
太陽光は黒い皮膚に対しても、薄い色の皮膚に対するのと同様に日焼けを起こします。黒い皮膚でも太陽光の下で日に焼けますので、フオトタイプWもしくはX(第10問の表を参照)を持つ人々においても、サンスクリーンは役に立つ化粧品であるといえます。黒い皮膚における日焼けのプロセスは、防護性の高いサンスクリーンを朝と日中に使用することで抑制できます。
13.赤外線は皮膚に対して傷害を起こしますか?
赤外線は熱を発生し、人の皮膚がそれに長い時間さらされることは、極めて有害であると言うことが多くの証拠で示されています。化粧品が赤外線に対して皮膚を防護できると言う証拠は今のところありません。 
透過による影響
反射による影響
 ILSIJAPANセミナー開催ご案内
「脂質栄養の最前線」

日本国際生命科学協会(ILSI Japan)共催

1.開催日時:平成10年11月28日(土)  13:30〜17:30
2.開催場所:昭和女子大学(東京都世田谷区太子堂1-7)下記案内図をご参照下さい。
3.スケジュール:
@開催の挨拶 日本国際生命科学協会 会長 木村 修一 先生 13:30〜13:40
Aテーマと講師
1)脂溶性ビタミンの栄養生理 五十嵐 脩 先生(お茶の水女子大学 教授) 13:40〜14:30
2)脂質の消化、吸収のメカニズム 今泉 勝己 先生(九州大学農学部 教授) 14:35〜15:25
 休憩 15:25〜15:40
3)不飽和脂肪酸グループ(n-3/n-6/n-9)の栄養評価 日野 哲雄 先生(日本国際生命科学協会) 15:40〜16:00
4)生活習慣病と高脂血症 斎藤 康 先生(千葉大学医学部 教授) 16:00〜16:50
5)全体討議 総合司会 木村 修一 先生(日本国際生命科学協会 会長、昭和女子大学大学院 教授) 16:55〜17:30
本セミナーは生涯学習の1単位として認められます。
4.参加費は無料ですが、資料代として当日1,000円を申し受けます。
5.お申込み先:
お申込みは、参加者御氏名、御所属、連絡先の御住所、電話番号をお書き添えの上、葉書あるいはファックスにて、11月20日までに下記宛お送り下さい。
〒166-0011 東京都杉並区梅里2-9-11-403(小池ビル)
日本国際生命科学協会
電話 03-3318-9663
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