1998年9月 No.92 |
モノカインとビタミンEについて |
〔要旨〕 マクロファージはガス状分子O2−、NO、脂質誘導体PGE2を初めとして、IL-6、TNF-α、MIFなどのモノカインを分泌し、炎症・免疫反応に大きく関与している。ビタミンEは単なる抗酸化作用だけでなく、マクロファージのmodulationを介してモノカイン分泌を制御するbeyond antioxidant functionを有していることが明らかとなった。 |
1.はじめに
マクロファージは種々なる刺激に対して、prostaglandins、leukotrienes*、PAF、活性酵素モノカイン*など100種類近いケミカルメディエーターを産生・放出し、炎症反応や恒常性に大きく関与している。そのなかでもIL-1*、IL-6、IL-8、TNF-α、MIFなどのモノカインは血管内皮細胞、平滑筋細胞、T細胞などとサイトカインネットワークを形成し、炎症反応、免疫反応などの主要な細胞間情報伝達物質として機能している。一方、ビタミンEは抗酸化作用以外に、細胞代謝や遺伝子調節を介して種々なる生理作用を発揮する“Beyond Antioxidant Function”として、免疫、炎症との関わりが指摘されている。しかしながら、その詳細な作用機序については十分に解明されていない。我々はこの点を明らかにする為に、多彩な生理機能を有するマクロファージのmodulationをめぐって、モノカイン産生とビタミンEの関係について検討した。 2.モノカインと炎症
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procoagulant活性の亢進、prostaglandins、PAF産生の亢進、白血球付着能の亢進等を介して血管損傷を惹起し、動脈硬化症の進展に深く関与していることが指摘されている2)。最近、このTNF-αの産生を亢進させるモノカインとしてMIF(macrophage
migration inhibitory factor ;マクロファージ遊走阻止因子)が注目されている3)。MIFはin
vitroの実験からマクロファージの遊走を阻止する因子として発見されたサイトカインであるが、最近の研究成果からマクロファージを炎症部位に集め、炎症、免疫反応を惹起し、特に遅延型アレルギー反応に密接に関与することが明らかにされている。すなわち図1に示すように、血中MIFは急性呼吸窮迫群やアトピー性皮膚炎患者において、TNF-α、IL-8などの炎症性サイトカインの上昇と共に、著明に増加している4,5)。
一般に、マクロファージの活性化に伴うモノカインの誘導、分泌には酸化ストレスによるNF-kB、AP-1等の転写因子の制御あるいはシグナル伝達が関係していると云われている。事実、Comstock et al、は血中の抗酸化能ビタミン(β-カロチン、ビタミンA、ビタミンE)は関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡患者において健常人に比して低値であることを報告している6)。 |
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3.ビタミンEとモノカイン
我々はこれまでに免疫担当細胞の一つ、マクロファージとその機能をめぐってO2−、PGE2産生とビタミンEの関係について研究してきた。その結果、ビタミンEが化学当量論的な抗酸化作用以外に、beyond antioxidant functionとしてマクロファージの修飾を介してO2−、PGE2、産生を抑制することを明らかにした7)。 Meydani dt al.もビタミンE補給のin vivo実験より同様の成績を得ている8)。彼等はまたビタミンEがPGE2産生の抑制作用を介して、T細胞の増殖、IL-2産生の亢進より免疫機能を増強することを併せて報告している。しかしながら、IL-6、TNF-α、MIFなどのモノカイン産生、放出に対するビタミンEの作用については未だ十分に明らかにされていない。我々はこの点を明らかにする為に、体重350-400gのWistar系雄ラットに5mgのビタミンEを6日間連続して腹腔投与し、マクロファージの修飾を行ない、モノカインとの関係について検討した。その結果、マクロファージのビタミンE含量は未処置群の1.2±0.4ng/106cellに対し、ビタミンE処置群では384.4±76.1ng/106cellsと著増することがわかった。次にこのようにビタミンEを大量に取込んだマクロファージを用いて、マクロファージのモノカイン産生とビタミンEの関係について研究した。モノカインの分泌量は各種刺激剤存在下で14時間培養されたマクロファージのmediumについて、それぞれの特異抗体を用いるELISA法で定量した。その結果、未処置群マクロファージのMIF、IL-6、TNF-αの分泌はカルシウムイオノフォア(A23187)、ホルボールミリステートアセテート(PMA)、リポ多糖(LPS)各刺激により増加することがわかった(表1)。一方、ビタミンEにより修飾を受けたマクロファージではその分泌は強く抑制された。 |
特にMIFの分泌は無刺激の0.77±0.23ng/mlに対して、各刺激にかかわらず0.34±0.11ng/ml〜0.58±0.14ng/mlの低値を示した。尚、未処理マクロファージ群では無刺激で2.27±0.20ng/ml、各種刺激剤で2.64±0.25ng/ml〜4.12±0.58ng/mlであった。一般にモノカインの分泌はprotein
kinase A、protein kinase C、細胞内カルシウム流入等を介するexocytosis*によるものと考えられる。従ってビタミンE修飾を受けたマクロファージのPMA、A23187刺激による各モノカインの分泌抑制はビタミンEの細胞膜修飾により、細胞内カルシウム流入、protein
kinase Cが阻害された為であると思われる。事実、我々は既にビタミンEが膜画分に取込まれ、細胞内カルシウムの流入抑制、protein
kinase C阻害を介して、O2−、PGE2産生を阻害することを明らかにしている7)。しかしながら、tyrosine
kinase系の細胞内情報伝達を介するLPS刺激において、ビタミンEの抑制作用がMIFとIL-6、TNF-α間で異なる理由については現在のところ不明である。
4.まとめ モノカインは細胞間相互作用を担うタンパク質のメディエーターとして、炎症・免疫反応に大きく関わっている。それゆえにモノカイン産生を制御することは新たな治療法につながる。今回、マクロファージのモノカイン分泌とビタミンEの関係について考察した。その結果、ビタミンEは単なる抗酸化作用だけでなく、beyond antioxidant functionとして細胞のmodulationを介して細胞内シグナル伝達系に作用している可能性が明らかとなった。今後、解明されるべき点は数多く残っているが、このような新しい別の観点から、臨床治療薬としてのビタミンE研究の進展が待たれる。 |
〈参考文献〉 1.McInnes, I.B. et al. Nature Med.,3, 189-195,
1997 2.Erl, W, et al. Am.J.Pysiol., 237, H634-640, 1997 3.Calandra, T.
et al. J.Exp.Med., 179, 1895-1902, 1994 4.Shimizu, T. et al. Biochem.
Biophys.Res.Commun, 240,173-178, 1997 5.Donnellt, S.C. et al. Nature Med.,
3, 320-323, 1997 6.Comstock, G.W. et al. Ann.Rheum. Dis., 56, 323-325,
1997 7.Sakamoto, W. et al. In:Food factors for cancer prevention(Ohigashi,
H. et al. eds.) Springer-Verlag, Tokyo.pp.460-464, 1997 8.Meydani, S.N.
et al. J.Am.Med.Assoc., 277, 1380-1386, 1997 9.Sakamoto, W. et al. Biochim.Biophys.Acta,
in press, 1998
*leukotrienes プロスタグランジン類の一種で、前駆体脂肪酸のアラキドン酸の5-リポキシゲナーゼ代謝物である。
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国際会議報告(The 3rd ISSFAL)(PUFA Newsletterより) |
ISSFAL(The International Society for the Study of Fatty
Acids and Lipids:国際脂肪酸及び脂質研究の国際会議)、は2年毎に会議を開催し、その第3回が6月2-5日、フランスのリオンで開催された。これはRudolph
Riemersma教授(イギリス、エディンバラ大学)とWilliam Harris教授(アメリカ、カンサス大学)が共同で座長を務めたTGについてのシンポジウムの主要点をまとめたものである。
危険因子としてのTG-疫学研究
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危険因子としてのTG値−臨床的視点
ドイツミュンヘン大学のPeter Schwandt教授は血漿TGの高値はCHDの危険率を2倍にするだけでなく、その他4つの主な脂質疾患の要素でもあるということを指摘した。 ・高カイロミクロン血症:膵炎及び急性腹部疾患に関連する。 ・慢性高TG血症:動脈硬化症及び合併症(CHD、発作、末梢血管疾患)の危険因子となり得る。 ・家族性のリポタンパク質低下性疾患:血管性合併症を高い頻度で起こすTG代謝の異常疾患である。 ・家族性の合併した高脂血症:高TG値、動脈硬化症の高い頻度に関係している。 Schwandt教授が観察したところによると、U型糖尿病はTG値の高値及び微小血管障害に特徴があった。 どのようにして、これらの疾患を治療すべきなのか?Schwandt教授は、最初治療の目標となるのは、糖尿病患者では150mg/dlを目標とするべきであるので、この患者を除くと200mg/dl以下に血清TG値を低下させるべきであると示唆している。体重の減少は、LDLコレステロールを低下させるが、不幸にもコレステロールと比較して糖尿病では、その低下がより少ない。患者へのアドバイスには、より良いライフスタイル、食事と運動、アルコール摂取の低減、禁煙が含まれる。魚油投与は、特に糖尿病患者に何らかの危険性を認められないので、含まれるべきである。薬剤による治療は、重症の場合には用いられるべきである。 冠状動脈疾患の発症率:食事と脂質
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食後のTG値へのn-3 LCPUFAの効果
TG値は食後上昇し、Physicians' Health Studyではこの増加量は現在の動脈硬化症の程度とその進行に比例することを示している。アイルランド・ダブリンのTrinity CollegeのHelen Roche博士は、閉経していない女性と比較して、男性では食後のTG値の上昇は少なく、年齢に伴い上昇し、女性では閉経後急速に悪化することを指摘している。もし、このTG値の変化の様子をグラフで示すと、曲線より下の面積が冠状動脈疾患(CHD)の直接の目安となる。脂肪を消化するのに、4〜6時間要し、大部分の人々が1日に3回かそれ以上の食事を摂取するので、脂質はほとんど一定の食後状態に保たれることを意味している。 しかしながら、TG値の上昇は、中程度の量の魚油によっても減少しうるとRoche博士は述べている。その有効性は用量に関連している。LCPUFAの摂取が増加すると共に、食後のTG値は低下する。RocheとGibneyは、空腹時のTG値等が同レベルの2群に、1日にエイコサペンタエン酸(EPA)0.54gとドコサヘキサエン酸(DHA)0.36g或いはプラセボを16週間に渡って与えた。その結果、空腹時血中TG値を20%減少させ、曲線より下の面積も30%減少した。投与量及び治療期間を変えた他の研究者による試験でも、全て、空腹時TG値で同様な減少を示した。低服用量でも20〜30%の低下が見られた。 血漿TG値へのEPAとDHAの効果
リポタンパク質代謝とLCPUFAの効果
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要約:安全性と勧告
アメリカ・ポートランドのOregon Health Sciences大学のWilliam Connor教授は、安全性について意見を述べてこのセッションを終了した。北西沿岸地方に住むエスキモー及びインディアンと同様に、長江の沿岸の中国人を含め、多くの土着の人々が1日50gといった大量の魚油を数千年以上摂取し続けていることを聴衆に想起させた。彼らが、生存し続け、繁栄していることは現在患者に投与されているより少量投与量の安全性についての証明である。 数千人の患者を含む多数の臨床試験にも拘らず、理論的な危険性は確認されていないが、理論的には危険性は存在する。これらは、幾つかの考えからでたものである。エスキモーは発作の高い発症率を示すが、臨床試験での患者は如何なる発症率の増加も示さなかった。ペルオキシド生成の増加、糖尿病患者における血糖値のコントロールの悪化、又は発ガン性に対する恐れはみられなかった:事実LCPUFAはガンの発症を遅らせるらしい。 数十年以上、くる病の予防のために、タラ肝油が子供に投与されたが、茶匙1杯分の用量は、LCPUFAを約1.25g含有している。これは、『ほぼ治療レベル』であり、魚油カプセルには酸化の増加を抑制するために、ビタミンEが含まれている。大用量の魚油は血小板数を減少させるが、総血小板容量には変化がなく、魚油のサプリメントを与えられた患者が心血管手術を受けても出血の増加はなかった。 インスリン非依存性糖尿病では、初期研究で魚油投与後血糖のコントロールの低下が見られた。しかし、最近のより大規模のより良くコントロールされた試験はこのようなことを確認されなかった。更に、糖尿病患者では魚油により、VLDLとTG濃度が低下した。 それ故、魚油やその成分であるLCPUFAs、即ちEPAとDHAを勧めることは、論理的であり、実際的でもある、とConnor教授は述べている。精製された製品、即ち50%或いはそれ以上のEPAとDHAを含むものを利用することは、特に論理的であり、必要とされる服用量を1日6g或いはそれ以上から1日1〜2gへ減らすことができる。魚油は、低脂肪食、運動、減量と並行して、高TG血症の最初の治療の選択肢とするべきであるともコメントし、コレステロール低下剤の危険性をもたないことに注目すべきとしている。Connor教授は、彼自身の長い臨床経験で、患者はコレステロール低下剤と異なり、通常魚油を摂取していることを観察している。一般人では予防方法は新鮮な魚の摂取に基づくべきである。『もし、魚を摂取できなければ、また嫌いであれば、更にアレルギーがある場合には、魚油をとるべきである』とConnor教授は結論づけている。 |
●Antioxidants and Oxidative Processes in Health and Foods November 5-6, 1998 Campus Center University of Massachusetts Amherst, MA 01003 edecher@foodsci.umass.edu ●International Conference on Diet and Prevention of Cancer May 28-June 2, 1999 Tampere, Finland ICDPC '99 Congress Management Systems P. O. Box 151 FIN-00141 Helsinki, Finland tel +358-9-175-355 fax +358-9-170-122 ●Wth European Congress of Gerontology Berlin 7-11 July 1999 Geber + Reusch Habichtsweg 11 D-60437 Frankfurt phone:(49)-69-505229 Fax:(49)-69-503978 |
心血管系疾患 |
ビタミンCとEの脂肪による内皮系機能損傷の予防
適量以上の脂肪摂取によって、動脈硬化が発症すると考えられているが、それは、内皮系機能の損傷が原因である。
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処理動脈の再狭窄(restenosis)に対するプロブコールと
抗酸化複合ビタミン剤の役割
冠血管形成術は術後restenosisが高頻度で発症することから、長期的な有用性が限られている。(restenosis処置動脈の再狭窄)
心臓病専門家による抗酸化剤の使用状況
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サンスクリーンに関する一問一答 |
10.サンバーンや皮膚の色素沈着に影響を与える重要な要因として何がありますか?
a.光の強さ − 緯度 − 標高 − 季節 − 日中の時間帯 − 暴露時間の長さ − ガラス、雲、水や被服の光透過性 − 砂、雪や草からの光反射 b.スキンタイプもサンバーンや皮膚の色素沈着に影響を与える。 11.AHA(アルファヒドロキシ酸、フルーツ酸とも言われる)を含む化粧品は表皮細胞の剥離に用いられます。この様な製品を使用している場合、太陽光を避けることは重要ですか? AHAを含む化粧品を使用するのは、皮膚に対する更新効果があるからです。すなわちAHAの使用は皮膚に刺激を与えることになり、その結果皮膚は紫外線に対してより敏感になります。 AHAを含む化粧品は、サンスクリーンがその組成分の一つとして含まれている必要があり、もしくは少なくともSPF9あるいはそれ以上のサンスクリーンと共に日常使われるべきです。 |
12.皮膚の色が黒い人もサンスクリーンを用いるべきですか?
太陽光は黒い皮膚に対しても、薄い色の皮膚に対するのと同様に日焼けを起こします。黒い皮膚でも太陽光の下で日に焼けますので、フオトタイプWもしくはX(第10問の表を参照)を持つ人々においても、サンスクリーンは役に立つ化粧品であるといえます。黒い皮膚における日焼けのプロセスは、防護性の高いサンスクリーンを朝と日中に使用することで抑制できます。 13.赤外線は皮膚に対して傷害を起こしますか? 赤外線は熱を発生し、人の皮膚がそれに長い時間さらされることは、極めて有害であると言うことが多くの証拠で示されています。化粧品が赤外線に対して皮膚を防護できると言う証拠は今のところありません。 |
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ILSIJAPANセミナー開催ご案内
日本国際生命科学協会(ILSI Japan)共催 1.開催日時:平成10年11月28日(土) 13:30〜17:30
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