1999年6月 No.95

女子大学生のビタミン摂取状況について

女子栄養大学大学院 臨床化学研究室  教授 安田 和人・平岡 真実
安田 和人氏 

平岡 真実氏 

〔要旨〕
最近、日本人の生活活動の内容はかなり変化しており、生活活動強度の低い者が増加している。女子大学生の調査でも、摂取エネルギーの平均は生活活動強度T(低い)のエネルギー所要量に近い値を示した。すなわち、食事量の減少のために、ビタミンB1では、所要量を満たしていない者は約二割みられたが、摂取エネルギー当たりでは大多数が水準を満たしており、摂取エネルギーに関係なく所要量が決められているビタミンAでは、ほぼ五割が所要量を満たしていなかった。しかし、これらのビタミンで血中濃度が低下している者はほとんどなかった。また、葉酸摂取量の増加が必要なことが示唆された。 

    日本人のビタミン摂取状況については、厚生省の国民栄養調査によれば1975年以降、ビタミンA、B1、B2、Cはいずれも所要量を越えていることになっている。しかし、それはあくまでも平均に関する話であって、個々にみれば、所要量に達していない人もいるはずであるが、果たしてどのくらいの比率で存在するのか。また、個人の食生活をみても、大多数の人は、毎日、調理損失も考慮に入れて、すべてのビタミン所要量を満たす理想的な食事を摂っているわけではない。すなわち、摂取量の日差変動は、どのような影響を与えるのか。また、上記以外のビタミンについてはどうか。これらの問題点を含めて、恐らく近い将来に出産し、子どもを育てるであろう若い女性たちの摂取状況を検討した。
    栄養学部で学ぶ21〜22歳の女子大学生のうち、一般的な血液生化学検査に異常値がなく、ビタミン薬を服用していない者193名を対象とし、連続3日間の食事調査を行って、ビタミンA、B1、B2、B6、ニコチン酸、B12、葉酸、C、Eの平均摂取量を算出し、それぞれ所要量を満たしている者の比率を求めた。なお、我が国の第五次改定栄養所要量において所要量が設定されていないビタミンについては米国の10th Recommended Dietary Allowances(RDAs)を援用した。また、調査終了翌日の血中ビタミン濃度を測定し、摂取量との関連性を検討した。対象者の体位は、身長:158.5±5.1cm、体重:52.4±6.1kg、BMI:20.8±2.1で、平成8年度の平均に近く、摂取量の個人差、日差変動に関するデータを得るために、特定の食事メニューを指示することは避け、調査期間中も各自の普段と変わらない食生活を維持するように求めた。また、対象者は栄養学実習の履修者で、各々自分の食事を秤量記録し、 
記録状況が成積評価の対象となることを熟知しており、できるだけ正確に記録するように求められた。 調査日数に関しては、予備調査を行い、対象者のビタミン摂取量の変動係数が安定するために最低3日を要すること、あまり長期間にわたると再び増大することを確認した。
    健康な女子大学生のビタミンB1摂取量(3日平均±標準偏差)は、0.91±0.26mg/day、個人差を示す変異係数(C.V)は28.6%(n=192)であり、所要量を充足していた者は、151名(78.6%)であった(図1)。また更に学校給食実施基準(昭和61年文部省告示第16号)を用いて、調理損失率を30%とすると、実質的ビタミンB1摂取量は0.64±0.18mg/dayとなり、充足者は34.4%に減少した。しかし、被験者のエネルギー摂取量は1.568±312kcalであり、ビタミンB1所要量設定の基礎試料として用いられたエネルギー当たりのビタミンB1摂取量:0.40mg/1,000kcalのレベルを満たす者は92.3%であることから、大多数の被験者は、一応、自らの摂取エネルギーに見合うビタミンB1は摂取していたことになる。また、被験者の全血総ビタミンB1濃度は55.1±12.2ng/mLで、基準範囲:35〜76(54.6±10.1)ng/mLの下限を下回る者は2名(1.0%)のみであった。すなわち、性、年令、生活活動強度別にみたビタミンB1所要量を満たしていない者は21.4%いたが、元来、所要量には個人差に見合う安全量として20%が上乗せされており、加えて被験者らは、エネルギー摂取量も比較的少なく、あまり運動もせず、したがってビタミンB1の需要も少なかったために、血中ビタミンB1濃度が低い者すなわち潜在性ビタミンB1欠乏状態の者は少ないことを示す成績が得られたものと考えることができる。
    同様に求めた被験者のビタミンB2摂取量は、1.20±0.31 mg/day、C.V.:25.8%(n=189)であり、ビタミンB2所要量を満たしていた者は72.0%であった。また、調理損失率を25%とすると、実質的ビタミンB2摂取量は0.90±0.23mg/dayとなり、充足者は30.2%に減少した。但し、エネルギー当たりビタミンB2摂取量:0.55mg/1,000kcalを満たす者は90.8%であった。また、被験者の全血総ビタミンB2濃度は85.9±17.1ng/mLで、基準範囲:58〜110(84.7±11.6)ng/mLの下限を下回る者は5名(2.7%)であった。すなわち、ビタミンB2所要量を満たしていない者は28.0%であったが、ビタミンB1と同様に、エネルギー摂取量や運動量の少ないことなどに助けられて、潜在性ビタミンB2欠乏状態の者は少ない成績が得られたと考えることができる。
    ニコチン酸の摂取状況については、被験者のトリプトファンからの転換分を含むナイアシン当量の摂取量は24.0±5.9 mg/day、C.V.:24.6%(n=189)であり、そのうち直接ニコチン酸として摂取したものは12.6±3.6mg/day、トリプトファンの形で摂取したものは11.4±2.8mg/dayで、両者の比は52.2:47.8%であった。すなわち、摂取エネルギー当たり15.3mgナイアシン当量/1,000kcal/dayが摂取されており、6.6mg/1,000kcal未満、すなわち所要量を満たしていない者はなかった。HPLC法で測定した全血総ニコチン酸濃度は487.0±119.5μg/dL(n=189)であった。基準範囲の285〜710(487.2±97.5)μg/dL(n=189)の下限を下回る者は皆無で、すなわち潜在性ニコチン酸欠乏者は存在しなかった。また、ナイアシン当量とエネルギーの摂取量の間には相関が認められた(r=0.670、p<0.0001)。
    被験者のビタミンB6摂取量は1.35±0.53mg/day、C.V.:39.3%(n=185)であった。我が国では第五次改定栄養所要量ではビタミンB6の所要量は設定されていないので、米国のRDA設定の基礎資料を一部援用した。すなわち、タンパク質摂取量g当たりのビタミンB6摂取量を求めると、0.023±0.010mg/g proteinとなり、そのうち、0.016mg/g protein以上の者を充足者と考えると、充足者は161名(87.0%)となった。因みに全被験者のタンパク質とビタミンB6の摂取量の間には相関(r=0.393、p<0.0001)が認められ、ナイアシン当量とビタミンB6の摂取量の間にも相関(r=0.439、p<0.0001)が認められた。HPLC法で測定した血清総ビタミンB6濃度は11.4±7.7ng/mL(n=185)であり、基準範囲:4.0〜17.0(9.1±2.7)ng/mLの下限を下回る者は6名(3.2%)であった。
    四訂日本食品標準成分表には葉酸は搭載されておらず、記載のある五訂日本食品標準成分表は新規食品編のみが公表されているので、米国のBowes & Church’s Food Values of Portions Commonly Used 16th Ed.を用いて算出すると、被験者の葉酸摂取量は187.3±73.3μg/day、C.V.:39.1%(n=157)であり、米国の所要量(180μg/day)を満たしていた者は70名(44.6%)であった。(図2)血清葉酸濃度は8.05±2.49ng/mLであり、基準値:4.8〜12.0(8.3±1.8)ng/mLの下限を下回る者は10名(6.4%)であった。 
    被験者のビタミンB12摂取量は4.88±3.55μg/day、C.V.:72.7%(n=162)であり、米国の所要量(2.0μg/day)を満たしていた者は137名(84.6%)であった。血清ビタミンB12濃度は615.1±215.1pg/mLであり、基準範囲:260〜1,050(589±170)pg/mLの下限を下回る者は1名(0.62%)であった。
    被験者のビタミンC摂取量は119.8±79.5mg/day、C.V.:66.4%(n=299)であり、第五次改定栄養所要量をみたしていた者は265名(88.6%)であった。血清総ビタミンC濃度は1.25±0.26mg/dLであり、基準範囲の下限を下回る者は6名(2.0%)であった。
    脂溶性ビタミンの摂取状況については、被験者のビタミンA摂取量は1,917.2±860.0IU/day、C.V.:44.9%(n=284)であり、所要量を満たしていた者は139名(48.9%)であった。血清レチノール濃度は42.0±12.4μg/dL(n=284)であり、基準範囲:20〜72(41.8±11.1)μg/dLの下限を下回る者は5名(1.8%)であった。ビタミンE摂取量は7.27±2.22mg/day、C.V.:30.5%(n=299)であり、第五次改定栄養目標摂取量を満たしていた者は158名(52.8%)であった。血清α-トコフェロール濃度は1.27±0.43mg/dL(n=299)であり、基準範囲:0.58〜2.25(1.24±0.35)mg/dLの下限を下回る者は9名(3.0%)であった。
    以上の結果から最近の女子大学生のビタミン摂取状況の実態を推察すると、ニコチン酸を除き、各ビタミンの第五次改定栄養所要量を満たしていない者は約一〜三割の比率でみられ、ビタミンA、葉酸は五割を越えることが明らかになった。但し、血中ビタミン濃度が基準範囲(正常値)の下限を下回る者すなわち潜在性欠乏状態の者は、葉酸を除き、0.6〜3.2%程度とわずかであった。すなわち、葉酸の摂取を増加させる必要があることが示唆された。 
図1 女子大学生のビタミンB1摂取状況

図2 女子大学生の葉酸摂取状況


 
 
 

疾病に対するビタミンの役割 

〈Vitamin Nutrition Research newsletter Vol.5 No.3より〉
冠動脈心疾患 
〔ビタミンB群〕
    葉酸は血中ホモシステインレベルを正常に保つことにより心疾患予防の役割をはたしている。B6やB12もホモシステインの代謝に必要である。高齢者はこれらのビタミンを必要量摂取するように心がけたい。 
〔抗酸化ビタミン〕
    ビタミンCやEの抗酸化ビタミンも心疾患予防に役立っている。
    特にビタミンEの効果が大きく、疫学調査でもビタミンE補助食品を摂取した人は摂取しない人よりも、冠動脈心疾患による死亡率が少ないことを示している。またビタミンEはすでに心臓病を発症している患者の冠動脈心疾患への進行を遅らせることも示されている。
     以下にNigelらの研究結果によるKaplan-Meierの生存曲線を症状別に示す。(The Lancet, Vol. 347. 1996) 
眼の退行性疾患
    白内障と黄斑変性症は高齢者にとって深刻な問題である。ビタミンや抗酸化剤などの摂取を含めた栄養素の摂取はこれらの疾病の予防や遅延に役立つであろう。
    疫学調査により、マルチビタミン剤やビタミンCまたはビタミンEの栄養補助食品摂取者、食事からのビタミンC摂取量の多い人は、そうでない人と比較して白内障の発症率が低いと示唆されている。
    黄斑変性症は目の網膜の疾患である。白内障と違い、黄斑変性症は効果的な治療がないため、早期での予防が必要である。
    白内障と同様、黄斑変性症の発症には酸化が関与しているので、予防には抗酸化剤が必要であろう。
    アメリカでの大規模な研究では、抗酸化物質(特にカロテノイド)の摂取量や血中レベルの高い人は、これらの栄養素の摂取量が低い人よりも、黄斑変性症を発症しにくいことが示唆された。カロテノイドの中でも緑黄色野菜に含まれているルテインとゼアキサンチンの効果が大きかった。これらのカロテノイドは目の網膜にも存在し、抗酸化的防御の役割をはたしている。またβ-カロテンにも黄斑変性症を防御する働きがある。 
Kaplan-Meierの生存曲線

(学会情報〉
●October. 17-21, 1999. 9th International Menopause Society World Congress on the Menopause  Yokohama, Japan  第9回国際閉経学会事務局  Tel:03-3263-2067  Fax:03-3263-4033
●October 1-3, 1999  40th Annual Meeting of the American College of Nutrition, Washington, DC. For more information call(212)777-1037. Fax 212-777-1103. 
●October 18-21, 1999  The American Dietetic Association Annual Meeting and Exhibition, Georgia World Congress Center, Atlanta.  (800)877-1600, ext 4866.  E-mail:mtgsinfo@eatright.org.  Internet:nttp://www.eatright.org.
●第3回「栄養とエイジング」国際会議  1999年9月21日−22日 東京  日本国際生命科学協会(ILSI-Japan)  TEL:03(3318)9663  FAX:03(3318)9554
●ビタミン広報センター講演会  1999年9月29日(水)午後  仮題:「ビタミンと健康」  詳細は次号等でお知らせします。

 
 
 

アトピー性疾患をもつ母親の脂肪酸代謝 

〈PUFA Newsletter Vol.3 No.1より〉
    G Yu, K Duchen(スウェーデン、Linkoping大学)らはアトピー性疾患をもつ母親とアトピー性疾患のない母親の母乳中脂肪酸組成の違いと子供のアトピー性疾患発症との関係についての研究を行った。

アトピー性疾患の有無による母乳の脂肪酸組成の違い 
対象:子供に母乳を与えている母親34人 
アトピー性疾患有;17人
アトピー性疾患無;17人
検体:出産後2〜4日後の初乳
授乳後1ヶ月後と3ヶ月後の成乳
結果:初乳のリノレイン酸とα-リノレン酸とそれらの代謝産物はアトピー性疾患の有無で差はなかった。
 n-3系長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)全体の量は、授乳後1ヶ月の間で急激に減少したが、その後回復した。(図1)
n-6系LC-PUFAのジホモーγ-リノレン酸(DGLA)と、n-3系LC-PUFAのEPA、DHA、DPA(ドコサペンタエン酸)は1ヶ月後の成乳で、アトピー性疾患のある母親の方が低かった。(図2) 

母乳中の脂肪酸組成と 生後1年間のアトピー性疾患発症との関係
    58人の母親(アトピー性疾患有:29人、アトピー性疾患無:29人)の母乳中脂肪酸組成の変化を出産後1年間調査した。
その間24人の子供がアトピー性疾患に罹患した。
母乳の脂肪酸組成は以下のような結果となった。

    アラキドン酸(AA)は炎症性エイコサノイドに促進的に、EPAは抑制的に働く物質の前駆体である。
筆者らはアトピー性疾患の無い女性のAA/EPA比が低いということは、アトピー性疾患のある女性よりも母乳中に抗炎症作用のある物質を多く含有していることであると示唆した。ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)の代謝産物はまだあまり知られていないが、同様のことが、AA/DGLA比の低値でも言えると考えられる。
    いくつかの研究で、LC-PUFAの補充はアトピー性疾患に効果があると示している。しかし、なぜ調整粉乳よりLC-PUFAを多く含む母乳を摂取している子供達が、一様に防御されないのかはまだ明らかではない。 

図1 出産後の母乳中n-3 LC-PUFAの変化

図2 成乳中(出産1ヵ月後)の各脂肪酸量

授乳期間中の母乳中γ-リノレン酸濃度の変化

授乳期間中のα-リノレン酸濃度の変化


 
 
 

メラトニンとビタミンE、Cとの組み合わせによる
紫外線防御効果 

〈British Journal of Dermatology 1998, 139より〉
    ヒトの無作為二重盲検試験で、異なる抗酸化剤とその組み合わせの短時間の光防御効果をin vivoで検討した。
対象: 平均年齢40±7歳の男女12人
 皮膚疾患なし、スキンタイプUまたはV(Fitzpatrick)
方法: 皮膚に紫外線を照射する30分前に、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(α-トコフェロール)、メラトニン(N-アセチルー5-メトキシトリプタミン)を表1の処方の組み合わせで局所に用いた。紅斑反応はバイオエンジニアリング法を用い、6、24、48時間後に肉眼的に測定した。
結果: 抗酸化剤の効果は、特に抗酸化剤を組み合わせた場合に顕著であった。松果体ホルモンであるメラトニンの局所的な使用は、用量に比例して紅斑の生成を抑制し、Banghaらによる結果を確認することとなった。しかし、ビタミンCやEを単独で使用した場合では、効果はないか、あるいいは穏やかであった。これらの2つのビタミンを組み合わせて用いた場合に、さらによい結果が得られた。最も劇的な改善効果が得られたのは、ビタミンEとビタミンCにメラトニンを組み合わせた場合で、明らかに紅斑反応が抑制されていた。
考察: UVに晒されることにより、酵素的あるいは非酵素的な皮膚の抗酸化剤が減少する。皮膚の抗酸化剤の量が減少すると、皮膚はますます、活性酸素種の有害に作用を受けやすくなる。ビタミンEのような抗酸化剤を局所に用いることは、組織内にこれらの防御的な化合物を充たす有効な方法である。補給により皮膚の抗酸化剤の量が維持される。この皮膚とは、特にUVに誘因される脂溶性抗酸化剤のビタミンEの減少に最も敏感な皮膚層である角質層である。皮膚の抗酸化剤の作用機構は複雑で完全にはわかっていない。反応系はお互いに作用しあっており、たとえば皮膚内でアスコルビン酸はα-トコフェロキルラジカルからα-トコフェロールを再生することができる。この研究で示されたように、光防御効果は、ビタミンEをビタミンCと組み合わせて用いられると強められ、これはビタミンCによるビタミンEの再生に起因するものと考えられる。この仮説は、in vitroでこれらのビタミンの相乗的な抗酸化作用を示した分散系の研究により裏付けられている。
    ビタミンCや2つのビタミンの混合物では明らかなサンスクリーンの効果はなかった。したがって既に述べたように、両方のビタミンを含んだ処方試料の顕著な光防御効果は主に、抗酸化的な特性によるものである。一方、この研究では非日光を模したUV源を用いたが、これは皮膚の紅斑反応の発生に影響を持つUVCを大量に発生させるため、試験物質の光防御を過大評価することになるかもしれない。このように、メラトニンと同様、ビタミンCはUVCの吸収が強いので、結果を解明する際に考慮すべきである。UVに誘因される抗酸化剤の減少に最も敏感な皮膚層は角質層であり、また、UVCが優先的に働く所でもあるので、この皮膚層を外因性の抗酸化剤で充たすことにより、日光を模したUV源に比べて非日光を模したUV源では、より強い光防御効果を得ることができる。これゆえ、結果を確認するために、日光を模したUV放射源を用いての更なる研究が必要である。
    メラトニンが光による障害を防御するメカニズムのひとつは、アラキドン酸の代謝を阻害し、プロスタグランジンや、ロイコトリエンの濃度を低下させることによると考えられている。UVに誘因される皮膚の紅斑の形成は、これらの代謝物のためと長い間考えられていた。このように、メラトニンによりこれらの代謝物の濃度を減少させることが結果的に、紅斑の形成を抑制する。最後に、光防御効果の増強が観察されたことに関してさらに考えられる理由は、試験に用いた抗酸化物質が、皮膚上層で生体内利用率に相互に影響を及ぼしあっているためと考えられる。この仮説は最近我々の研究室で検討中である。
    今回の研究結果は日光を模したUV源で確認することが必要であるが、光防御効果はサンスクリーンや抗酸化特性を持つ化合物を適切に混合することにより得られるであろう。メラトニンとビタミンEやCの組み合わせがその混合物に相当すると思われ、屋外での使用にふさわしい処方試料やサンスクリーンの添加成分として使われる可能性を持っている。 
図1 表1処方の抗酸化剤配合クリーム塗布後の紅斑反応


 
 
 

身体活動とビタミン必要量B 

〈VNIS BACK-GROUNDER Vol.6, No.1より)
栄養と身体活動の相補的な役割 
冠状動脈疾患のリスク低下
    規則的な運動は、冠状動脈疾患、高血圧、卒中の危険性を減少するので、健康的なライフスタイルの1つとして勧められている。運動の冠状動脈疾患への保護効果は、体重のコントロール、グルコース耐性及びインスリン代謝の改善、血圧の低下、中性脂肪の消費;脂質及びリポタンパク質代謝の改善;凝固及び止血因子の改善;抽出量を増加させる能力を強化することによる心機能の改善などの結果によるものである。心疾患のリスクを低下させることが示されているビタミン類の適切な摂取を確実に行うことは、運動の効果を増大させる。酸化的ストレスは筋肉損傷を起こし、また動脈硬化の原因の1つでもある。低密度リポタンパク質(LDL)の酸化は、心疾患の原因となる動脈硬化症の主要原因である。ビタミンEはこの酸化の予防に効果的である。
    最近数年間で多数の疫学調査により、1日100IU以上のビタミンE摂取は冠動脈疾患のリスクを減少させることが証明されている(表2)。この効果は最初はサプリメントの使用から見出されたが、最近のある研究での注目すべき点は、ビタミンEと冠状動脈疾患による死亡率の減少の相関性が、サプリメントを摂取していないが、ビタミンEを食事から多量に摂取している女性のサブグループでもみられたことである。また、最近の臨床介入試験では、ビタミンE800IUの約18ヵ月間摂取により、冠状動脈の動脈硬化症に罹患している患者で、致命的でない心筋梗塞の危険性が低下した。さらにいくつかの研究結果によると、ビタミンCの大量投与も心疾患の危険性の低下と関連していた。
    近年の研究によると、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の摂取は心疾患の危険性と相関があった。研究者達は、心疾患の危険性は血漿中のホモシステイン(アミノ酸の1種)値と直接関連すること、及びこれら3つのビタミンの高値はホモシステイン値を低下させることを見出した。ホモシステイン値の上昇はコレステロールや他の危険因子からは完全に独立した危険因子である。アメリカ人の大部分はライフスタイルに悪影響を及ぼす可能性のあるホモシステインを制限できるだけのビタミンを摂取していない。 
免疫機能への効果
    高度なトレーニングを重ねたスポーツ選手は感染症にかかりやすいという多数の報告は、激しい運動を行うことが免疫機能を抑制する可能性があるということを示唆するものである。コーチゾール及びカテコールアミン値は運動中に増加する。これらのホルモンは免疫抑制的であり、低下した免疫力に部分的に働く。特殊な免疫系は1回の集中的な運動により影響されるらしい;例えば、ナチュラルキラー細胞の活性の減少、CD4+細胞と呼ばれる特殊化した免疫細胞の減少など。一方、マウスを用いた研究では、適度な運動は免疫機能を強化することが示されているが、ヒトの免疫機能への運動の効果は未だ研究されていない。
 ビタミンE,C,A,B6とβ-カロテンは免疫系で重要な役割を果たしており、特にビタミンE,C及びβ-カロテンの大量摂取により、免疫機能を強化することが示されている。ビタミンCを毎日600mg摂取しているランナーは、プラセボを投与されているランナーに比べて、マラソン後呼吸器系の感染症の発症が低下した。他のビタミンが運動に伴って起きる感染症の増加を予防するかどうかは未だ不明である。
骨の健康の維持
    体重維持のための運動の利益の1つは、骨粗鬆症の危険性を減少させることである。各栄養素もまたこの疾患の進行を遅らせる重要な因子である。更年期後の骨の損失は回復させるのが困難なので、予防的措置はできるだけ早期に開始されるべきである。カルシウムに加え、骨の成長及び維持に必須な役割を果たす栄養素にビタミンD,C及びKがある。これらのビタミンとミネラルの所要量を満たす食事は骨の健康を促進する上で、運動の有効性と相補的に働く。健康な骨を維持するためには、運動と共に、これらのビタミンの摂取も必要である。


 
 
 
 
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