2000年1月 No.97

出回り期の長い野菜とビタミンC1)2)

―4訂食品成分表の1食品、1標準成分値を考える― 

女子栄養大学栄養学部    生物有機化学    教授    辻村   

辻村 卓氏

〔要旨〕
    野菜や果実の季節感が年々失われつつある。これは栽培技術および輸送技術が向上・発達したことに伴った変化であると思われる。ほしい食材が四季を通していつでも手に入るようになり、食卓が豊かにになったことは確かだが、その栄養価はどうなっているのだろうか。健康志向の高まりの中で、いま野菜が注目を集めている。高い栄養価を有する主要な野菜の中で、通年で含有成分量が数倍変動するもの(ほうれんそう、ブロッコリー、にんじんなど)には2つの、あるいは季節ごとの成分値の設定が望まれる。 
    脳は他の組織に較べ、ドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれることから、DHAと脳の高次機能との関連性が注目されている。その反面、DHAなどの多価不飽和脂肪酸は、生体内での酸化ストレスを受け易く、各種疾患の危険因子となる可能性も指摘されている。今回、若・加齢ラット共に、DHA長期摂取により大脳の抗酸化機構が亢進し、記憶学習能の向上効果が見い出された。DHAによる老人性痴呆の予防・改善作用が期待できるものとおもわれる。 

はじめに
     野菜や果実の季節感が年々失われつつある。これは栽培技術および輸送技術が向上・発達したことに伴った変化であると思われる。ほしい食材が四季を通 していつでも手に入るようになり、食卓が豊かになったことは確かだが、その栄養価はどうなっているのだろうか、健康志向の高まりの中で、いま野菜が注目を集めている。出回り期の長い野菜についてこの栄養価の問題を考えてみた。そして食品成分表の1食品、1標準成分値について考察してみた。

実施
     東京とその近郊における店頭の日常的な野菜で毎月のビタミンCとカロチンを1回に5地域からサンプリングし合計25種類測定した。出回り期あるいは季節毎の分析値が食品成分表記載の値とどのような関係になるかを検討した。食品成分表にはその幅広い利用目的に即して、1食品、1標準成分値を原則とするとあるが、試料として用いた25種類の野菜、果実の栄養成分量は、特にビタミンで季節的変動が大きいことを認めた。変動の小さい試料はセロリー、ピーマンの2種類でしかなかった。従って、現行の食品成分表の基本となる、1食品、1標準成分値を適用できる野菜は限られているようであった。通年の分析試験で、季節により含有量に著しい差が認められた試料は次のようである。じゃがいも、ビタミンCの1〜4月値と5〜9月値。トマト、カロチンの11〜12月値と6〜8月値、にんじん、カロチンの1〜2月値と5〜10月値、ブロッコリー、カロチン、ビタミンCの7〜8月値と12月〜4月値。そして特にほうれんそう、ビタミンCの6〜10月値と11〜2月値で著しかった。3〜5月値では徐々にビタミンC含有量が小さくなった。原材料的食品は、動・植物由来の天然物であり、その成分値はかなりの変動幅の中にあることを考慮しても、本実験の結果から1食品、1標準成分値では利用上の限界があることを認めざるをえない。特に5〜10月に店頭に出回るほうれんそう、ブロッコリーはそれぞれの旬(11〜2月)の時期に比べ、ビタミンCが低くなっている。高い栄養価が期待される主要野菜であるから、この期間両野菜についてはもう一つの成分表値が必要であると考える。より正確な栄養価計算の基礎資料として、整備しなければならない。 
    日常的な食品については各地方(地域)で、季節毎の成分値あるいは出回り最盛期(旬)とそれ以外の季節の成分値などが必要であると思われた。 

食品成分表は学校給食、病院給食の給食管理面、食事制限、治療等の栄養指導面はもとより一般家庭における日常生活面においても、広く利用されている現状がある。使用上の煩雑さにつながる点は避けなければならないが、その改善には前向きに取り組むべきであろう。1食品、1標準成分値を食品が持つ季節の栄養価とどのように合わせることができるのか、このような視点で食品の分析データをより多く集める必要があると思われる。
日本で食べられてきた野菜
    われわれの食べ物に対する興味は、見慣れたもの、子どもの頃口にしたものなどかなり限定されていて、経験したことのないものを積極的には口のなかに入れてみたいとはあまり思わないのではないだろうか。いまの若い人達はどうなのだろうか。かつてトマトやキャベツが受け入れられるまでに50年ほどを要したと文献にあるが、グルメ時代の今日からではとても考えられないことである。だが、私自身、タイ料理やインドネシア料理を現地で初めて食したときのあの口内の緊張、強張りを思い返すと、納得できることでもある。高宮ら3)は日本の野菜に関する研究の中で、今われわれのまわりで目にする野菜のうち、日本原産のものはごくわずかしかないことを報告している。ふき、みつば、うど、せり、ごぼう(やまごぼう)、あざみ、わさび、さんしょう、みょうがなどが挙げられている。日本原産の野菜だけではとても生きてはいけない。栄養不足、特にビタミンやミネラルの不足に陥ってしまう。だいこんやかぶは日本原産ではないが、その歴史は古く、なすやきゅうりが日本に入ってきたのはこれよりも新しい。「古事記」や「日本書紀」には、まめ(だいず)、かぶ、しょうが、だいこんなど。「万葉集」には、さといも、にら、はす、まくわうりなどが登場している。江戸時代にはかぼちゃ、にんじん、ほうれんそう、スイカも日常の食生活の中に取り入れられていたようだ。明治政府は多くの野菜をヨーロッパ、アメリカから持ちこみ、日本各地で栽培させたが、その多くは当時の日本の食習慣や嗜好になじまず、一般家庭にはなかなか定着しなかったようだ。しかし、このとき試験栽培されたものの中からキャベツ、たまねぎ、トマトなどが長い時間をかけて食卓に迎えられ、今日の食生活において主要な野菜の地位を獲得することになった。
ビタミンCに関する新しい研究報告
―血圧、血中コレステロールとの関係―
    アフリカ系アメリカ人であるSeventh Day Adventist(土曜日を休日とするキリスト教集団)を被験者とするToohey4)らの疫学的研究で、血漿アスコルビン酸(AsA)濃度が高いとき心臓血管の危険因子は小さくなることが報告されている。食事からのアスコルビン酸の摂取量を200mg以上とするとき、成人のコレステロール代謝に極めて有効であるとの結論であった。
    AsAは水溶性の抗酸化物質であり、ビタミンEと同様LDLの酸化を抑制することが知られている。AsAが抗動脈硬化因子として機能し、リポタンパク質代謝を調節することが明らかになりつつある。TooheyはSeventh Day Adventistの信者よりベジタリアン、セミベジタリアンさらにノンベジタリアンのボランティアを募り、女性126名、男性42名を被験者とする実験では次の結果を得ている。
(1)血漿アスコルビン酸濃度の高いとき、収縮期及び拡張期血圧は低くなる。
(2)人において血漿AsA濃度が低い場合、血中LDLコレステロールが上昇するため血中総コレステロール濃度は上昇する。
(3)血漿AsA濃度が高い場合、血中HDLコレステロールが上昇するため、血中総コレステロールは低下する。
    高等動物の血中コレステロールはトリグリセリド、リン脂質、数種タンパク質とともにリポタンパク質として存在し、さまざまな組織に輸送される。リポタンパク質は、ヒトの場合には超低密度リポタンパク質、中間密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)が存在する。LDLは肝臓から末梢組織へと脂質を運搬し、HDLは末梢組織から肝臓へと脂質を輸送することから、LDLコレステロール濃度の上昇とHDLコレステロール濃度の低下は動脈硬化や心筋梗塞の発症の危険性を高める。さらにLDLが酸化されてできる酸化LDLは粥状動脈硬化の発症へと導くことになる。
この研究を通して、食事から一日当たり200mg以上(日本におけるビタミンC所要量 100mg/dayの2倍以上,6次所要量)のビタミンC摂取が血中コレステロール代謝改善に効果 を発揮することが証明された。しかし、AsA200mgだけの効果というよりは食事から、あるいは野菜からAsAを200mgとるということが必要条件なのであろう。
 
季節による野菜中ビタミンCの量の変動を成分表値に取り入れたい
    野菜は原材料的食品であり、ある程度の栄養成分含有量に幅を持たせることは必要なことである。しかし、現行の栄養所要量の4倍を越える1日200mg以上のビタミンCを食事から摂取することを考えるとき、食品成分表の1食品、1標準成分値では栄養価計算の信頼性が小さくなる。例えば、野菜中のビタミンCの年間変動幅が、標準成分値のどの程度の範囲なのかは示されなければならない。
    今日、出回り期が長い野菜であっても、四訂食品成分表の基礎データを作成した1980年頃、当時の分析値の中には、出回り期(栄養素が充実している季節)以外のすなわち出回り少量期の季節の栄養成分の分析値は、含まれていなかったのではないか。今回実施した通年の野菜の分析結果をもとに、現行の1標準成分値を再検討しなければならない。
おわりに
    いま野菜中のビタミンC、カロチンの季節的変化の実験を終え、改めて標記のテーマを考えるとき、今日の食品成分表が原則としている1食品、1標準成分値では対応しきれない時代に入ったことを認めざるをえない。
    高い栄養価を有する主要な野菜の中で、通年で含有成分量が数倍変動するもの(ほうれんそう、ブロッコリー、にんじんなど)には2つの、あるいは季節ごとの成分値の設定が望まれる。
    今日、病院や学校、職場における給食の現場では、「成分表」のデータがコンピュータに入力されていて、それをもとに献立を考え、栄養価計算を行っている現状がある。栄養成分が季節により大きく変動することを知っていて欲しい、魚介類や乳類などではどうなのか。今後野菜以外の食品についてもこのようなデータが発表され、給食の現場などで広く利用されることを期待したい。1990〜1999年の共同研究者に感謝する。(ビタミンC研究委員会委員)

 
 

卵黄摂取後の血漿中ルテインとゼアキサンチン濃度 

(Garryら、Am. J. Clin. Nutr 1990 ; 70, 247-251)
    カロテノイドの一種であるルテインとゼアキサンチンは卵黄に多く含まれており、網膜の黄斑部分に蓄積され、視覚機能に影響を及ぼしている可能性がある。
    近年、カロテノイドを含む食品はその生物活性について研究が進められている。この研究では、卵黄摂取による血漿中カロテノイド濃度への影響について検討を行った。
対 象:高脂血症者の男女11人
試験食:
  @コーン油食(脂質エネルギー比率20%)
 A牛脂食(脂質エネルギー比率20%)
 B牛脂+調理した卵黄1.3個分
  Cコーン油+調理した卵黄1.3個分
各食の摂取期間:4.5週間(次の試験食への移行に2週間の間隔をあけた)
結 果:
卵黄摂取後(コーン油食と牛脂食)の平均血漿中ルテインの増加量は0.114μmol/L、ゼアキサンチンは0.062μmol/Lだった。血漿中β-カロテンとリコペンの濃度は有意な変化はなかった。 
コーン油食、牛脂食ともに、卵黄摂取後は血漿中コレステロールが約5%上昇した。これは主にLDL-コレステロールの上昇(8-11%)によるものであった。

図 各被験者(11人)の牛脂食での卵黄負荷前後の血漿中カロテノイドの変化 

 
考 察:ルテインとゼアキサンチンは、特に網膜の黄斑部分に蓄積される。ゼアキサンチンは特に黄斑部分に含まれているのに対し、ルテインは網膜に分布する。食事中のルテインとゼアキサンチンは、  75歳以上のアメリカ人のうち20%が罹患するという老人性網膜黄斑変性症を予防する可能性があり、老人性網膜黄斑変性症に対するルテインとゼアキサンチンの予防効果について、今後も研究が進められるべきである。 

 
 
 
 

持続型即時黒化反応によるUVA防御試験

―パルソール1789、14.3%被膜酸化チタン、10.2%被膜酸化亜鉛の比較―
試 料:各試料には、いずれも4%パルソールMCXが含まれている。
・3%パルソール1789
・3%被膜微粒酸化チタン
・10%被膜微粒酸化チタン
・3%被膜微粒酸化亜鉛
・10%被膜微粒酸化亜鉛

被験者:肌タイプU−Wの男女5人
肌タイプ U:容易に日焼け(赤くなる)し、微かに黒くなる
V:日焼け(赤くなる)した後、いつも黒くなる
W:あまり日焼け(赤くなる)せず、すぐ黒くなる

方 法:日本化粧品工業連合会でUVA防止効果測定法に推奨されている、持続型即時黒化反応(PPD)を測定した。

光 源:Schott WG 335/2 mm and UG 11/1 mm filters 
UVA波長域(320-400nm)の放射線があてられた。 


最小持続型即時黒化反応量(MPPD:Minimal Persistent Pigment darkening Dose)の測定
MPPDとはテスト部位に黒化が認められたUVA照射量をいう。
試験前に、曝露前より25%以上増加するまでUVA照射を続け、試料無塗布の肌のMPPDを測定した。
PFAの測定
テスト部位:試験者の背中5×10cm
試料塗布:各試料2mg/cm2をテスト部位に指先で塗る。
試料塗布:各試料2mg/cm2をテスト部位に指先で塗る。
 テスト部位を5つに分けてUV-Aを連続照射。
 各部位で、照射後120、180、240分に測定
PFAの算出:PFA=試料塗布部のMPPD/試料無塗布部のMPPD

まとめ
パラソール1789はヒト実験でUV−A防御効果を発揮し、その効果は被膜酸化チタン、被膜酸化亜鉛よりもすぐれていた。
(Roche Vitamins Inc. 社内資料) 


 
 
 

リコペンの吸収率

(Antioxident Vitamins Newsletter Vol.8 No.1より)
    Milan大学の研究者が生トマトと加工品(トマトペースト)のリコペンの吸収率を測定した。女性10人を2群に分け、リコペンを16.5mg摂取できるように、生のトマトかトマト加工品(トマトペースト)を摂取させ、血漿中リコペン濃度を測定した。その結果、血漿中総リコペン濃度は両群とも摂取後6時間後にピークをむかえ、その後は徐々に低下していった(図)。生のトマトより加工品からの摂取の方が、血漿中リコペン濃度が高かった(p<0.025-0.01)。
    この研究結果は、Gartnerら(1997)のトマト製品中のリコペンは加工により、生物活性が増加するという結果を確証づけた。
(Br. J. Nutr 80(4):353-361) 
*Christineらも同様の結果を報告している。 (Am. J. Clin. Nutr 66(1):116-122)
*図 リコペン摂取後の乳び球中リコペン濃度の変化
〈学会情報〉 

●13th International Congress of Dietetics, Edinburgh, Scotland, July 23-27, 2000.  Congress secretariat: c/o Meeting Makers, Jordanhill Campus, 76 South-brae Drive, UK-Glasgow G13 1PP. Tel: +44 (0) 141 434 1500; Fax: +44 (0) 141 434 1519; Email: dietertics@meetingmakers.co.uk 
●Eleventh Workshop on Vitamin D, Nashvill May 27-June 1, 2000 University of California-Riverside Fax 909-787-4784 Email: vitamind@vcrac1.vcr. edu. Internet: http://vitamind.vcr.edu. 
●Nutrition and Exercise February 11-12, 2000 An Intensive Workshop, Los Angeles. TEL(501)851-6651 FAX(501)257-2501 Email: fisherelizabeth@exchange.vams.edu. Internet: http://www.nancyclarkrd.com.


 
 
 

経口避妊薬(ピル)と栄養(2) 

〈Nutritional Concerns of Womenより〉
トリプトファン代謝の異常
    ビタミンB6状態を評価する間接的な方法として、トリプトファン負荷試験での投与後、尿中のキサンツレン酸量を測定する方法がある。
    ピリドキサールリン酸塩(PLP:ビタミンB6)に変換後のビタミンB6の主な役割の1つは、必須アミノ酸の一つであるトリプトファンからのナイアシン形成時に触媒として作用する。この代謝経路を図1に示す。この経路の最初の酵素であるトリプトファンピロラーゼ(TPアーゼ)は、ピルからの直接的効果または副腎皮質グルココルチコイド分泌への2次的刺激に特に感受性を示すことがわかった。機序がどうであろうと、この肝臓TPアーゼはナイアシン経路へ通常より多くのトリプトファンを誘導する。するとトリプトファン代謝経路の多くの段階がビタミンB6依存性であるため、ビタミンB6の代謝的依存性が高まる。この結果、トリプトファンの中間代謝産物が蓄積され、ビタミンB6欠乏症となる。
    ピルがビタミンB6状態に影響を与えるという懸念は、妊娠状態との類似性から起こった。事実、トリプトファン経路での同様な異常が、色々なエストロゲン−プロゲストーゲン併用型避妊薬を摂取している女性でみられている。これはトリプトファン負荷後でも、負荷なしでもみられる。何人かの研究者は、ピルを摂取している女性でのキサンツレン酸(XA)の尿中排泄量は、非摂取者と比較すると多いと示している。エストロゲンのトリプトファン代謝への作用機構が明らかでなかった間は、XA排泄の増加はピリドキシン(ビタミンB6)欠乏の証拠として解釈されていた。多くの研究者は、エストロゲンによる肝臓のトリプトファン代謝の活性化は、TPアーゼ活性が増加した結果であると考えた。従って、トリプトファン経口負荷は、トリプトファン分解促進に由来する、過剰のキヌレニンとヒドロキシキヌレニンにアミノ基転移するように、アミノトランスフェラーゼ(図参照)を刺激することで、PLP補酵素の総体的な不足をもたらす。
    B6依存性キヌレニナーゼレベルでの、総体的なビタミンB6欠乏症はトリプトファン代謝物の蓄積をもたらすことになる。最近になり、Benderらはエストロゲンを投与した女性でのトリプトファン代謝の異常は、エストロゲン代謝による酵素の阻害によるもので、TPアーゼの刺激によるものではないという結論に達した。
キヌレニナーゼ活性の阻害あるいは、TPアーゼ活性のどちらが、トリプトファン代謝の変化の原因であるかは未だ明らかになっていない。まだ確定していないにもかかわらず、ピルの摂取によりトリプトファン代謝が乱れ、ビタミンB6欠乏症を促進しているということについては、一般的な同意が得られている。
    しかし、ビタミンB6欠乏症の指標としてのトリプトファン負荷試験の有効性がしばしば疑問視されてきた。ある研究では、XAの尿中排泄は血漿PLPとほとんど相関性がなかった。Leklemはピル服用者と非服用者でトリプトファン負荷試験を行ったが、ビタミンB6状態の指標である、尿中シスタチオニン、尿中ピリドキシン酸、血漿PLP、赤血球中アラニン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼについては、有意差は認められなかった。ビタミンB6状態の指標としてのトリプトファン負荷試験の利用は、エストロゲンまたはこれらの代謝物によるキヌレニナーゼの阻害が、ビタミンB6欠乏症と判別しにくくすることからも、批判されている。要するに、PLP依存性酵素であるキヌレニナーゼの活性もまた、ビタミンB6欠乏により阻害されるので、キヌレン酸およびXAの排泄を増加させることになる。この酵素の阻害はラットにエストロゲン(硫酸エストロン)を投与した時に示されているが、投与量は臨床的に投与される量の3倍に相当する。
    また、トリプトファン代謝異常の臨床的有意性に関連する問題が残っている。TPアーゼ活性の増加は、ピルを服用している女性にみられるうつ症状の原因となることが示唆されている。実際に、ピルによるこの酵素の誘導は感情をコントロールするセロトニン(5-ヒドロキシプトリタミン、5-TH)の合成に必要な、脳内トリプトファンの量を減少させる可能性がある。

 

肝臓と脳内でのトリプトファン代謝 
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