血清カロテノイドが萎縮性胃炎に及ぼす影響              
Yoshinori Ito ら, Enviro. Health Prev. Med. 6, 184-188, 2001

 
対 象

北海道住民 206名(男性76名、女性130名)、39歳以上

健康診断時に空腹時血液を採取し、各項目を測定

 

 
結 果
 
表:血清中カロテノイド・レチノールと萎縮性胃炎のオッズ比との関係
 
オッズ比(95%CI)
血清中成分
総カロテノイド(μmol/L)
1.00
0.73(0.34-1.60)
0.80(0.32-2.03)
リコペン(μmol/L)
1.00
0.61(0.28-1.30)
0.80(0.33-1.96)
α-カロテン(μmol/L)
1.00
0.39(0.18-0.86)
0.33(0.13-0.82)
β-カロテン(μmol/L)
1.00
0.36(0.15-0.83)
0.35(0.13-0.94)
β-クリプトキサンチン(μmol/L)
1.00
0.32(0.14-0.72)
0.51(0.21-1.26)
プロビタミンA(μmol/L)
1.00
0.29(0.13-0.69)
0.27(0.10-0.73)
レチノール(μmol/L)
1.00
0.89(0.39-2.01)
0.79(0.30-2.11)
*性、年齢、飲酒、喫煙、総コレステロール、血清中ヘリコバクター・ピロリ抗体、GPT活性 調整後
 
 
表: ヘリコバクター・ピロリ抗体有無による血清中カロテノイド・レチノールと萎縮性胃炎のオッズ比との関係
 
ヘリコバクター・ピロリ抗体陰性
 
ヘリコバクター・ピロリ抗体陽性
オッズ比(95%CI)
オッズ比(95%CI)
血清中成分
総カロテノイド(μmol/L)
1.00
0.79(0.24-2.60)
0.62(0.16-2.40)
1.00
0.80(0.31-2.05)
0.79(0.26-2.40)
リコペン(μmol/L)
1.00
0.61(0.19-1.92)
0.60(0.17-2.15)
1.00
0.43(0.16-1.19)
0.51(0.16-1.69)
α-カロテン(μmol/L)
1.00
0.49(0.16-1.52)
0.40(0.11-1.45)
1.00
0.30(0.10-0.89)
0.27(0.08-0.88)
β-カロテン(μmol/L)
1.00
0.66(0.21-2.06)
0.35(0.09-1.35)
1.00
0.33(0.12-0.95)
0.43(0.13-1.46)
β-クリプトキサンチン(μmol/L)
1.00
0.37(0.12-1.18)
0.49(0.13-1.95)
1.00
0.41(0.16-1.07)
0.71(0.24-2.09)
プロビタミンA(μmol/L)
1.00
0.35(0.11-1.08)
0.32(0.09-1.16)
1.00
0.40(0.14-1.13)
0.37(0.11-1.25)
レチノール(μmol/L)
1.00
0.99(0.31-3.22)
0.64(0.15-2.81)
1.00
0.49(0.17-1.43)
0.37(0.11-1.18)
 
 
考 察
いくつかの研究から、ヘリコバクター・ピロリ菌感染は胃がんのリスクを有意に増加させると報告される一方、ヘリコバクター・ピロリ菌感染は萎縮性胃炎とは直接関連はないと示唆している。
これまでの研究では、脂質過酸化と萎縮性胃炎リスクの増加とは相関関係があると示している。この関係は本研究結果の以下の2点と同様である。 1.血清TBARS値が高い人はリスクが高い傾向にあった。2.β-カロテンやα-カロテン、β-クリプトキサンチンのような血清カロテノイド高値は萎縮性胃炎のリスク低下と関連があった。
さらに、本研究ではα-カロテンやβ-カロテンのような血清カロテノイドの高値者のオッズ比は、ヘリコバクター・ピロリ抗体陽性群の萎縮性胃炎発症者で低かった。しかし、これらのオッズ比はヘリコバクター・ピロリ抗体陽性群の萎縮性胃炎発症者では低くはなかった。
α-カロテンやβ-カロテンは主要な抗酸化物質であるため、萎縮性胃炎とヘリコバクター・ピロリ菌感染の同時発症は酸化によるものとも考えられる。また、萎縮性胃炎と血清カロテノイド値の逆相関関係は酸化される過程でカロテノイドが減少したことによるとも推察できる。
最近、いくつかの研究はβ-カロテンを多く含む緑黄色野菜は萎縮性胃炎とヘリコバクター・ピロリ菌感染のリスクを低減させると報告している。
 
 

Home Top

 

(c)Copyright Vitamin Information Center since 2000 December