心 疾 患

心疾患におけるビタミンEの役割は10年以上も研究が続けられてきた。ヒトでの多くの疫学調査では、ビタミンEを含む抗酸化物質と心疾患発症リスク低減との関連がみられている。同様に介入試験でも、心血管系疾患に対するビタミンEの防御が示唆されている。 他の介入試験で異なった結果もでており、他方のビタミンEの効果を測定する方法も有益である。 動物実験では、ビタミンEは動脈硬化の進行を抑制する重要な因子であるという証拠が得られた。 特に動脈硬化に関連した遺伝子欠損モデルでの研究が可能である。Cyrusら（2001）の研究では、ビタミンE摂取により遺伝的に疾病に罹患しやすいマウスにおいて、動脈硬化が65％減少した。 さらに最近のRosenblatt, Aviram（2002）らの研究では、コレステロール酸化をビタミンEが抑制するという結果を動物実験において初めて証明した。
動物実験とヒトを対象とした試験との大きな違いは、動物では心臓病初期の発作を起こすことができるが、ヒト介入試験では、既に心臓病が発生している個々を集めて対象にする傾向がある。 つまり、ヒトにおいてビタミンEの防御的効果を調査するには、心臓病が発症する前の試験が効果的であると考えられる。 さらに、動物実験ではビタミンEの機能性を評価することが可能である。 例えば、ビタミンEには血液凝塊を生成する原因となる血小板凝集の抑制（Mabileら, 1999）や、血管を滑らかに保つ動脈内皮細胞の癒着分子の発現の抑制（Wuら, 1999）、心血管系疾患リスク減少の重要な因子である動脈の弾力性の増加（Mottramら, 1999）、さらには血管炎症の抑制（Devarajら, 2000）などの作用が認められている。
これらの多くの研究結果を総合して考察すると、ビタミンEには冠血管系疾患に対し、さまざまな作用機構による防御的効果がさらに期待できる。
ビタミンEはいくつかの作用機構により、心血管系疾患の発症と進行を抑制する
- コレステロールの酸化抑制
- 血液凝固の抑制
- 血管の弾力性を改善する
- 血管炎症の抑制
参考文献
・	Steinberg 2000 -a comprehensive review about the role of vitamin E in heart disease, from a cautious but optimistic standpoint
・	Heinecke 2001 -an objective review discussing current approaches for studying the role of vitamin E in heart disease
・	Devaraj and Jialal, 2000 -Vitamin E reduces inflammation of blood vessels, a risk factor in heart disease
・	Wu et al., 1999 -vitamin E reduces expression of adhesion molecules in human aorta endothelium cells and hence could be involved in keeping the blood vessels smooth
・	Mottram et al., 1999 -vitamin E appears to increase artery elasticity, an important factor reducing CHD risk
・	Devaraj et al., 2001 -Vitamin E reduces expression of CD36, a receptor involved in cholesterol aggregation
・	Cyrus T et al., 2001 -Vitamin E supplementation reduces atherosclerosis in mice genetically prone to the disease
・	Rosenblatt & Aviram 2002 -Vitamin E decreases oxidation of cholesterol under conditions of oxidative stress
・	Mabile L et al., 1999 -Moderate supplementation with natural alpha-tocopherol decreases platelet aggregation and low-density lipoprotein oxidation

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