目 的
ルテインとゼアキサンチンの2種類のキサントフィルは黄 斑色素の主要成分であり、加齢黄斑変性(AMD)から黄斑を 保護すると考えられる。本研究では、キサントフィル非含有
の食餌で飼育したアカゲザルにルテインまたはゼアキサンチ ンを投与し、血清カロテノイドおよび黄斑色素の経時的変化 を追跡した。
方 法
アカゲザル18匹をキサントフィル非含有の食餌で出生から 7〜16年間飼育した。その後ルテインまたはゼアキサンチン を3.9μmol/kg/日(2.2mg/kg/日)量で24〜56週間の投与を
行った(各6匹ずつ)。投与期間中のベースライン及び4週と 12週間隔においてHPLCにより血清カロテノイド量を計測し、 二波長反射率測定法により黄斑色素密度を検定した。血清カ
ロテノイド及び黄斑色素については、家畜用食餌で飼育した 動物についても測定した。
結 果
<血清中カロテノイド>
キサントフィル非含有食を投与した個体群では、計測可能 な量のルテインとゼアキサンチンが存在せず、血清中に検出 されたカロテノイドはリコペンのみであった(<0.070μ
mol/L)。この個体群にルテインまたはゼアキサンチンの投 与を開始すると、血清中のキサントフィル濃度は最初の4週 間急速に増加し、4週間までにルテイン投与群でルテイン濃
度が1.14μmol/L(範囲0.53〜1.85)、ゼアキサンチン投与 群でゼアキサンチン濃度が0.65μmol/L(範囲0.19〜1.43)
に達した(図1)。投与群での血清中のキサントフィル量は、 投与後2週間までに家畜用食餌を与えたグループの量を超え、 その後ルテインについては約10倍、ゼアキサンチンについて
は10〜20倍迄高くなった。しかし、血清中ルテイン濃度増加 は12週を超えるとなくなり、16週以降合計キサントフィル濃 度はどちらの投与群についてもほぼ近似した状態となった。
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<黄斑色素密度>
カロテノイド非含有食の投与後は、黄斑色素の光学的密度 は非常に低かった。しかし、ルテインまたはゼアキサンチン 投与後には血清中濃度が増加しただけではなく、黄斑色素も
蓄積された。この結果は、キサントフィルのない状態で成長 しきった霊長類の網膜であっても、ルテインまたはゼアキサ ンチンのどちらでも黄斑色素を蓄積するメカニズムを保持し
ていることを実証するものである。よって、黄斑関連の疾病 のリスクがある高齢者において黄斑色素を増加させたい場合 や更に、黄斑色素密度の低い状態の続いた食糧事情の悪い人
々にとっても、ルテイン・ゼアキサンチンを摂取することで 効果を得られる可能性がある。 黄斑色素の光学的密度は最初の24〜32週間で増加したが、
その後32〜56週には更なる一貫した増加は見られなかった (図2)。 眼底部カラー写真では、投与期間のどの時点においても、 網膜内に結晶の形成は発見されなかった。これは黄斑キサン
トフィルに暴露されたことのない網膜であっても、高投与量 に暴露された場合キサントフィルを取り入れることが可能で あることを示唆している。逆に、通常網膜に存在しないカロ
テノイドを高用量で与えると、このように良好な反応は出ず に結晶生成に至ることがある。
結 論
アカゲザルでは、出生後全期間という長期間においてキサ ントフィルの欠乏があったにも関わらず、ルテインおよびゼ アキサンチンを摂取することにより、血清中キサントフィル
量および黄斑色素が増加した。したがって、この種はAMDに 対する保護メカニズムの研究モデルとなることが可能である と思われる。
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